特定技能のりあい窓口

https://tokutei-noriai.blog/2026/10/15/shissou-boushi/ 印刷日:2026年10月15日

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特定技能外国人の失踪(行方不明)を防ぐには|原因と会社ができること

失踪の背景は「借金・待遇・人間関係」。先回りの予防策と、連絡が取れなくなった日からの届出の順番

特定技能の外国人社員と、ある日を境に連絡が取れなくなった。こうした失踪(行方不明)は、転職が認められている特定技能では技能実習より少ないとされます。それでも、母国で抱えた借金、聞いていた手取りとの違い、職場の人間関係が重なると起こり得ます。会社の責めによる行方不明者を出すと、受け入れの基準を満たせなくなることもあります。この記事では、公的資料から失踪の背景を整理し、入社前からできる予防策と、起きたときに警察・出入国在留管理庁・ハローワークへ届け出る順番を、2026年10月時点の情報で解説します。

この記事の結論
  • 背景は借金・待遇・人間関係の3つ:出入国在留管理庁は技能実習生の失踪の主な原因に、賃金の不払いなど受入れ側の不適正な取扱いと、入国時に払った費用の回収など本人の経済的事情を挙げています。
  • 予防は「お金の見える化」と「相談の出口」:手取りと残業の見込みを本人の言語で示し、借金の状況を責めずに聞き、相談先を3つ渡します。パスポートを預かるなどの引き止めは、してはいけない対策です。
  • 起きたら安否確認→警察→入管の順:警察への行方不明者届は雇主も出せます。入管へは受入れ困難の届出(第5-15号の状況説明書を添付)を速やかに出し、契約を終えたら終了日から14日以内に終了の届出を出します。
  • 会社の責めがあると受け入れが止まる:会社の責めに帰すべき事由で行方不明者を出すと受入れ機関の基準に合わなくなり、その後1年間に結ぶ特定技能の雇用契約も基準を満たしません。

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この記事の目次

結論:特定技能の失踪は「3つの背景」に先回りし、起きたら14日以内に届け出る

特定技能の外国人の失踪を防ぐ近道は、借金・待遇・人間関係という3つの背景に、問題が小さいうちに手を打つことです。それでも連絡が取れなくなったら、安否確認と警察への届出を先に行い、出入国在留管理庁への届出を14日以内に済ませます。

特定技能1号は、同じ分野の中なら本人の意思で転職できます。辞めたいときに正規の道があるため、技能実習より失踪は少ないとされます。ただ、借金の返済に追われる人や、相談相手のいない人は、正規の手続きを知らないまま姿を消すことがあります。

図1特定技能の失踪を考えるときの4つの数字

  • 0.14%特定技能外国人の行方不明者の割合技能実習生の失踪率1.8%と比べた有識者会議の委員の意見(数字の年の記載なし)
  • 3,950人技能実習生の失踪者数(2025年)2023年の9,753人(1.9%)から減り、失踪率は0.6%
  • 約55%借金をして来日した技能実習生借金の平均は54万7,788円(2022年7月公表の調査)
  • 1年会社の責めで行方不明者を出した後、新しい契約が基準を満たさない期間特定技能の受入れ機関の基準(省令)
特定技能の行方不明は割合としては小さい一方、起きたときに会社が受ける影響は大きくなります。出典:出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 中間報告書」(2023年5月11日)、出入国在留管理庁「失踪事案の現状」(2026年7月・速報値)、出入国在留管理庁「技能実習生の支払費用に関する実態調査について」(2022年7月26日公表)、e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(2026年10月確認)

この記事でいう「失踪」

会社にも同僚にも連絡がなく、所在が分からない状態を「失踪」と呼びます。入管への届出では「行方不明」という言葉を使います。退職の意思を伝えたうえでの転職や帰国は含めません。

以下、背景→予防策→兆し→起きた日からの手順→届出→会社に残る影響の順に説明します。制度の基本は特定技能とは?にまとめています。

外国人の失踪の原因:公的資料に出ている3つの背景

公的資料が示す失踪の主な原因は、受入れ側の不適正な取扱いと、本人の経済的な事情です。出入国在留管理庁は技能実習生について、「賃金の不払いなど」と「入国時に支払った費用の回収など」を挙げています(2026年7月)。人間関係を加えた3つで考えると、手を打つ場所が見えます。

使うデータの多くは技能実習生のものです。特定技能だけを対象にした失踪の原因の公的な調査は、確認できた範囲では見当たりません。ただ、2021〜2024年に1号を得た341,253人のうち211,411人(約62%、計算)は、技能実習を修了して移った人です。同じ背景を持つ人が少なくない、と考えておくほうが安全です。

借金:来日前の費用を返し終えていない

出入国在留管理庁が2022年7月に公表した調査では、技能実習生が来日前に送出機関や仲介者へ払った費用の平均は54万2,311円でした。約55%が借金をしており、借金の平均は54万7,788円です。返済の途中で収入が減ると、より高い収入を求めて職場を離れる動機になります。

待遇:聞いていた手取りや残業と違う

同じ調査で、来日後の給料が「期待より少ない」と答えた人は約21%でした。その理由の約63%は「残業や休日出勤が少ない」、約33%は「給料の支払方法を知らなかった」です。残業代を返済の計算に入れている人には、残業が減ること自体が生活の見通しを崩します。

受入れ側の問題が見つかった例もあります。法務省のプロジェクトチームが2019年にまとめた調査では、2017年1月〜2018年9月に失踪した技能実習生5,218人のうち759人で、受入れ側の不正行為が疑われました。

図2失踪した技能実習生の調査で疑われた主な不正行為(人数)

  • 残業時間などの不適正231人
  • 割増賃金の不払い195人
  • 賃金からの過大な控除92人
  • 契約した賃金の違反69人
  • 最低賃金の違反58人
  • その他の人権侵害36人
不正が疑われた759人を、不正の種類ごとに数えた主な内訳です(1人に複数あり。書類不備などを含む延べ数は937件)。お金と時間の扱いが上位を占めています。出典:出入国在留管理庁「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム 調査・検討結果概要」(2019年)

人間関係:指導のつもりの言葉が「脅し」に聞こえる

出入国在留管理庁の受入れ機関向けリーフレットは、指導が目的でも、暴言や暴行、「指示に従わなければ帰国させる」といった脅しは許されないとしています。相手も自分と同じ価値観だ、という前提に立たないことも求めています。言葉が通じにくい職場では、強い口調や冗談が、本人には解雇や帰国の予告に聞こえることがあります。

特定技能で失踪が少ない理由と、それでも起きる3つの場面

特定技能で失踪が少ないのは、同じ分野の中なら本人の意思で職場を変えられるからです。2023年5月の有識者会議の中間報告書には、技能実習生の失踪率1.8%に対し、特定技能外国人の行方不明者の割合は0.14%で、10倍以上の差があるとする意見が載っています。

特定技能の転職は珍しくありません。2021〜2024年に1号を得た人のうち、2025年8月末までに転職した人は22.4%でした(出入国在留管理庁)。辞める道が開いていることは、失踪を減らす方向に働きます。それでも、次の3つの場面では正規の道を選ばずに姿を消すことがあります。

場面1:転職の手続きを知らない

会社や分野を変えるには、在留資格の変更許可が必要です。新しい会社で働けるのは許可を受けた後で、標準処理期間は1か月〜2か月です。その間の生活費が足りない人や、手続きを知らない人は、許可を待たずに知人の紹介先で働き始めてしまうことがあります。入社時に「辞めたいときの正しい手順」を伝えておけば、黙っていなくなる理由を1つ減らせます。

場面2:「もっと稼げる」という誘い

出入国在留管理庁のリーフレット「危険な誘い」は、他人の在留カードを使って別の会社で働く「ひみつのアルバイト」などへの誘いに注意を促しています。こうした働き方は不法就労です。雇った会社は不法就労助長罪に問われ、法定刑は現在「3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金」です。2027年4月1日からは「5年以下・500万円以下」に引き上げられる予定です。詳しくは不法就労助長罪の記事で解説しています。

場面3:働いていない期間が3か月に近づく

正当な理由なく3か月以上「特定技能」の活動をしていないと、在留資格が取り消されることがあります(特定技能制度Q&A Q38)。休職が長引いた人や、退職後に次の職場が決まらない人は追い詰められがちです。会社と支援機関が早めに状況を知っておくことが、失踪の手前で止める鍵になります。

外食業でも「分野内の転職」は開いている

外食業は2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付が一時停止されています。それでも2026年9月10日掲載の情報では、外食業分野内での転職は審査・許可が続いています。飲食店で働く人も、正規の手続きで職場を移れます。詳しくは外食業の特定技能をご覧ください。

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外国人の失踪を防止する対策:お金・待遇・人間関係の3本柱

失踪の防止対策は、3つの背景それぞれに「見える化」と「相談の出口」を用意することです。変えるのは、入社前の説明、毎月の給料日、困ったときの連絡先の3か所です。

図3失踪を防ぐ3本の柱

  • お金の見える化手取りの見本を、残業が多い月と少ない月の2通りで示す。借金や送金の予定を責めずに聞き、返済の見通しを一緒に確かめる。
  • 待遇の約束を守る雇用条件書を本人の言語で渡し、残業・休日・控除の説明を入社前に済ませる。給料は口座振込で、全額を期日に払う。
  • 相談の出口を複数に社内の担当2人、登録支援機関、公的窓口の3つを連絡先カードにして渡す。本国の緊急連絡先も、本人の同意を得て把握する。
どれか1本が欠けると、困りごとを抱えた人の選択肢が「黙っていなくなる」に狭まります。

お金:借金を責めずに聞き、手取りを見せる

入社前の事前ガイダンスは、運用要領で3時間程度が必要と考えられており、1時間に満たないものは適切とはいえないとされています。ここで労働条件のほか、保証金や違約金の契約がないこと、支援の費用を本人に負担させないことも伝えます。手取りの見本は、税金・社会保険料・寮費を引いた額で示します。

借金の有無は、採用の可否を決めるためではなく、入社後の支えを考えるために聞きます。会社が本人にお金を貸し、給料から天引きして回収する形は避けます。労働基準法17条は、前借金と賃金の相殺を禁じています。送出し機関の手数料と本人の借金の問題は、二重契約・中間搾取の禁止で詳しく扱っています。

待遇:残業と控除を先に伝え、約束どおり払う

雇用条件書(参考様式第1-6号)には、英語・ベトナム語・インドネシア語など10言語版があります。厚生労働省の外国人雇用管理指針も、労働条件を母国語や平易な日本語で示すよう求めています。給料は、預貯金口座への振込など、支払額を確かめられる方法で払うことが特定技能の基準です。

人間関係:相談先は3つ、指導役は2人

相談・苦情への対応は義務的支援の1つです。本人が十分に理解できる言語で、1週間に勤務日3日以上・休日1日以上受けられる体制が求められます。仕事を教える人と、評価に関わらない相談役を分けておくと、指導役への不満も口にしやすくなります。3層の相談体制は相談・苦情対応の体制づくりをご覧ください。

してはいけない「失踪防止策」

  • パスポートや在留カードを会社が預かる(外国人雇用管理指針は保管しないよう求め、取上げは入管への通報の対象です)
  • 給料の一部を「帰国のときに渡す」として積み立てさせる(労働基準法18条の強制貯金の禁止)
  • 「途中で辞めたら罰金」などの違約金や保証金を約束させる(労働基準法16条、特定技能の基準)
  • 給料を手渡しにして支払日を遅らせる、一部を留め置く(全額払いの原則に反します)
  • 「言うことを聞かないと帰国させる」と脅す

どれも本人を職場に縛る手段で、失踪の背景をかえって深くします。

失踪の兆しに気づく:見逃しやすい変化と声のかけ方

失踪の前には、お金・連絡・職場のどこかに変化が出ることがあります。2つ以上が重なったら、その週のうちに話を聞きます。

図4失踪の前に出やすい6つの変化(編集部の整理)

  • ① 前借りの相談が続く給料日前の「少し貸して」が2か月続く。送金の話が急に増える。
  • ② 残業を強く求める「休日も出たい」と繰り返す。返済の期限が近いことがある。
  • ③ 欠勤・遅刻が急に増える体調不良の連絡が続く。夜に別の場所で働いていることもある。
  • ④ 他社の条件を気にする他社の時給を聞いてくる。正規の転職の手順を伝える機会。
  • ⑤ 同僚との会話が減る休憩を1人で過ごす、特定の先輩を避ける。
  • ⑥ 寮の私物を減らしている同室者の話で分かることがある。無断で部屋に入って確かめない。
サインは「辞めるつもり」の証拠ではありません。話を聞くきっかけとして使います。

声のかけ方:責めずに、正規の選択肢を示す

話を聞くときは、問い詰めずに「困っていることはないか」から入ります。お金の相談なら、返済の見通しを一緒に紙に書き出します。転職を考えているなら、変更許可を受ければ同じ分野で職場を移れること、許可の前に別の会社で働くと不法就労になることを伝えます。「辞めたいなら正直に言ってほしい。手続きは手伝う」と言える会社は、黙っていなくなる理由を減らせます。

聞いたことは相談記録書に残す

相談に対応したら、相談記録書(参考様式第5-4号)に記録します。日付、本人の言葉、会社の対応、次に確かめる日を1件ずつ残します。万一連絡が取れなくなったとき、この記録が状況説明書を書く材料になります。辞める理由の見分け方は特定技能外国人が辞める理由も参考になります。

連絡が取れなくなったら:最初の3日間でやること

連絡が取れないと分かった日は、届出より先に安否の確認をします。事故や急病の可能性もあるからです。事件や事故に巻き込まれた心配があるときは、日数を待たずに警察へ相談します。

  1. 1日目:電話・メッセージと同僚への確認

    本人の携帯電話とメッセージに連絡し、同じ寮や同じ言語の同僚に、最後に会った日と様子を聞きます。寮の部屋を確かめるときは2人以上で入り、時刻と様子を記録します。

  2. 1日目:登録支援機関に連絡する

    本人の母国語で連絡してもらい、知人への問い合わせを分担します。自社で支援している場合は、支援責任者がこの役を担います。

  3. 1〜2日目:本国の緊急連絡先に連絡する

    入社時に本人の同意を得て把握した家族などに、所在を知らないか確かめます。入管の技能実習向けリーフレットも、本国の緊急連絡先の把握を勧めています。

  4. 1〜3日目:警察署に行方不明者届を出す

    行方不明者届は家族だけでなく、雇主など社会生活で密接な関係にある人も出せます(行方不明者発見活動に関する規則6条)。届け先は、行方不明になったときの住所・居所を管轄する警察署です。

  5. 3日目まで:経緯を時系列でまとめる

    最後の出勤日、最後の連絡、給与の支払状況、直前の相談内容を書き出します。受入れ困難の届出に添える「行方不明が判明した際の状況説明書」(参考様式第5-15号)の下書きになります。

  6. 並行して:給与と私物の扱いを決める

    働いた日までの賃金は、全額払いの原則どおり支払います。罰金や違約金として差し引くことはできません。私物は勝手に処分せず、一覧にして保管します。

戻ってきたときは、責める前に理由を聞く

本人と連絡がつき、雇用契約を終えずに元の条件で働き続けるなら、雇用契約の終了の届出は要りません。ただし受入れ困難の届出を出していた場合は、復職の経緯を説明する文書を出します(随時届出Q&A Q2-45)。理由を聞くときは、賃金の未払いや指導の行き過ぎがなかったかも確かめます。

特定技能外国人が行方不明になったときの届出と期限

出入国在留管理庁へは、まず「受入れ困難に係る届出」(参考様式第3-4号)を速やかに出します。行方不明のときは、第5-15号「行方不明が判明した際の状況説明書」を添えます。雇用契約を終えたら、終了日から14日以内に「雇用契約の終了」の届出(第3-1-2号)を出します。

行方不明が分かったときに出す届出(2026年10月時点)
届出様式など期限出す先
受入れ困難に係る届出第3-4号に第5-15号(状況説明書)を添付速やかに(事由が生じてから14日以内に到達)本店所在地を管轄する地方出入国在留管理官署
雇用契約の終了第3-1-2号(終了年月日と終了事由)終了日から14日以内同上
支援委託契約の終了(その人のためだけの契約)第3-1-2号に記載すれば、第3-3-2号は別に出さなくてよい14日以内同上
基準不適合(会社の責めがある場合)第3-5号14日以内同上
外国人雇用状況の届出雇用保険の資格喪失届で兼ねる(被保険者の場合)離職日の翌日から10日以内(被保険者でない人は翌月末日)ハローワーク
行方不明者届警察署で手続き速やかに住所・居所を管轄する警察署

14日は「届いた日」で数える

随時届出は、届出事由が生じた日から14日以内に地方出入国在留管理局へ到達している必要があり、消印では足りません。期限を過ぎたら速やかに出し、遅れた理由の説明書を添えます。届出をしない、または虚偽の届出をすると、一定期間特定技能の雇用契約を結べなくなることがあり、罰金や過料の対象にもなり得ます。

図5行方不明が分かってからの届出の順番

  1. 当日〜3日目:安否確認と警察への行方不明者届経緯は時系列でメモします。
  2. 速やかに:受入れ困難の届出(第3-4号+第5-15号)受入れ困難の届出は、雇用契約の終了の前に出すのが原則です。
  3. 就業規則に沿って:雇用契約を終えるかを判断復職すれば終了の届出は不要です。経緯を説明する文書を出します。
  4. 終了日から14日以内:雇用契約の終了の届出(第3-1-2号)その人のための支援委託契約も終わるなら、同じ届出に書きます。
  5. 離職日の翌日から10日以内:ハローワークへ雇用保険の資格喪失届で、外国人雇用状況の届出を兼ねます。
先に契約を終えて終了の届出を出した場合も、受入れ困難の届出を速やかに出すよう求められています。出典:出入国在留管理庁「特定技能所属機関からの随時届出に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」(2025年6月)、出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」(2026年10月確認)、厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」(2026年10月確認)

何日で「行方不明」とするかは社内で決めておく

随時届出のQ&Aには、何日連絡が取れなければ行方不明とするかの決まりは示されていません。雇用契約を終える時期も同じです。無断欠勤が続いたときの扱いを就業規則に定めておき、その手順に沿って判断します。判断した日と理由は記録に残します。迷うときは、社会保険労務士や地方出入国在留管理局に早めに相談します。

失踪が起きた会社に残る影響と、再発を防ぐ見直し

会社の責めに帰すべき事由で行方不明者を出すと、受け入れそのものが止まります。特定技能の省令は、雇用契約を結ぶ日の前1年以内とその後に、会社の責めによる行方不明者を発生させていないことを、受入れ機関の基準にしているからです。随時届出のQ&Aも、これを「基準不適合」の例に挙げています。基準に合わない間は、特定技能の受け入れはできません。

「会社の責め」とされやすいのは賃金と相談

何が「責めに帰すべき事由」に当たるかの一般的な線引きは、公開資料では確かめきれていません。手がかりは特定技能制度Q&AのQ77です。登録支援機関の登録拒否事由の説明として、「賃金を払わなかったり、相談・苦情に適切に対応しなかったことなどの理由で」行方不明となった場合を挙げています。給与の誤りと相談の放置は、特に避けたい点です。受け入れが止まる理由の全体像は特定技能が不許可になる理由と対策で解説しています。

再発を防ぐ振り返り

出入国在留管理庁は技能実習について、所在が分かった後に賃金の未払いなど不適切な取扱いがなかったかを本人や同僚から聞き、入国前の説明やコミュニケーションを自己点検するよう求めています。特定技能でも、次の6点を確かめると原因に近づけます。

  • 直前3か月の給与明細で、残業代・控除・支払日に誤りがなかったか
  • 入社前に見せた手取りと実際の手取りの差を、本人に説明していたか
  • 3か月に1回以上の定期面談が、本人の分かる言語で行われていたか
  • 相談記録に、お金や人間関係のサインが残っていなかったか
  • 指導の場面で、強い言葉や「帰国させる」といった言い方がなかったか
  • 同じ寮・同じ職場のほかの人に、同じ不安が広がっていないか

定着の仕組みは特定技能外国人の定着率を上げる方法、将来の見通しの示し方はキャリアアップの記事で扱っています。母国語で相談に応じられる登録支援機関を比べたいときは、特定技能のりあい窓口が条件に合う会社を最大3社まで無料でご紹介します。順位は付けず、選ぶのは御社です。掲載している会社から紹介手数料を受け取る場合がありますが、手数料の有無で提案の順番や内容は変えません。

想定ケース:居酒屋チェーン(従業員15人)の総務部長が、給料日の説明を変えた理由

想定ケース(利用イメージ)について:この章は、特定技能の会社選びでよく寄せられる相談をもとに、編集部が場面を再構成した想定インタビューです。実在の企業・人物の発言ではありません。数値は公的資料にもとづく目安です。

居酒屋を3店舗営み、外食業の特定技能の社員4人を雇う会社の総務部長(50代・男性)の想定インタビューです。

  • 見直し後の2年間、行方不明は0人(見直し前の1年で1人)。転職した1人は、正規の手続きで同じ外食業の別の会社へ移った
  • 給料日に明細を一緒に見る時間を、1人15分ずつ毎月設けた
  • 本国の緊急連絡先を、本人の同意を得て4人全員分そろえた(以前は0人分)

――見直して、何が一番変わりましたか。

黙っていなくなる人がいなくなりました。去年、1人が「別の店で働きたい」と私に言いに来たんです。支援機関に手伝ってもらい、許可が出てから円満に送り出しました。寂しかったですが、正直ほっとしました。以前なら、ある朝いなくなっていたかもしれません。

――見直しのきっかけは何でしたか。

3年前、給料日の2日後から1人と連絡が取れなくなりました。寮には荷物が残ったままです。あとで同僚から、母国で借りたお金の返済が遅れていたと聞きました。年末の営業時間を短くして、残業が月20時間ほど減った時期でした。残業代を返済に当てていたことを、会社は誰も知らなかったんです。

――そのとき、何に困りましたか。

何から手を付ければいいか分からなかったことです。警察に届けてよいのは家族だけだと思い込んでいました。入管への受入れ困難の届出も、状況説明書を書くのに手間取りました。届いたのは期限の2日前です。経緯のメモを残していなかったので、最後に話した日すらはっきりしませんでした。

――対策を考えるとき、どこで迷いましたか。

最初は、パスポートを会社で預かれないか、寮に門限を作れないかと考えていました。委託先の登録支援機関に相談したら、担当者にはっきり言われました。「パスポートを預かっても失踪は防げませんし、そもそもしてはいけません。防げるのは、お金の不安を早く聞くことです」。耳の痛い話でしたが、できないことを先に言ってくれたので、この人たちと組もうと決めました。

――実際には、何をしていますか。

3つです。入社前に、残業が多い月と少ない月の2通りの手取りを見せる。給料日には明細を一緒に見て、送金や返済で困っていないかを聞く。連絡先のカードを、店長と私と支援機関の3か所にして渡す。1人15分でも、4人で月1時間です。営業前の時間を使っています。

――続けてみて、つまずきはありましたか。

忘年会シーズンに給料日の面談が2回飛びました。今は月初めに、私の予定表へ先に入れています。借金の話は、最初は誰もしてくれませんでした。半年ほどたって、ある社員が「あと3か月で返し終わる」と自分から話してくれたときは、うれしかったですね。届出の手順は1枚にまとめ、事務所の壁に貼ってあります。

相談は無料です。条件に合う会社を最大3社までご紹介します。最終的に選ぶのは御社です。

よくある質問

特定技能外国人が失踪したら会社はどうなる?

まず届出の義務が生じます。受入れ困難の届出に状況説明書(第5-15号)を添えて速やかに出し、雇用契約を終えたら終了日から14日以内に終了の届出を出します。賃金の不払いや相談の放置など、会社の責めに帰すべき事由による行方不明と判断されると、受入れ機関の基準に合わなくなります。その後1年間に結ぶ特定技能の雇用契約も基準を満たせず、受け入れが止まります。

何日連絡が取れなければ「行方不明」として届け出ますか?

出入国在留管理庁の随時届出Q&Aに、日数の決まりは示されていません。安否確認を先に行い、所在が分からないと判断した日を記録します。受入れ困難の届出は、届出事由が生じた日から14日以内に入管へ到達させる必要があります。無断欠勤が続いたときの扱いは、就業規則で先に決めておきましょう。

警察への行方不明者届は、会社が出してもよいですか?

出せます。行方不明者発見活動に関する規則6条は、親族などのほか、同居者や雇主など、社会生活で密接な関係にある人からの届出を受理するとしています。届け先は、行方不明になったときの住所・居所を管轄する警察署です。本国の家族にも、登録支援機関を通じて連絡を取りましょう。

行方不明になった人が戻ってきたら、どうしますか?

雇用契約を終えずに元の条件で働き続けるなら、雇用契約の終了の届出は要りません。受入れ困難の届出を出していた場合は、復職の経緯を説明する文書を入管に出します(随時届出Q&A Q2-45)。責める前に理由を聞き、賃金や指導に問題がなかったかも確かめます。

パスポートを会社で預かれば、失踪を防げますか?

防げませんし、してはいけません。厚生労働省の外国人雇用管理指針は、旅券や在留カードを事業主が保管しないよう求めています。旅券や在留カードの取上げは、支援の担当者が地方出入国在留管理局へ通報する対象でもあります。防止に効くのは、お金の不安と人間関係の悩みを早く聞く仕組みです。

連絡が取れなくなった人の給料は払う必要がありますか?

働いた日までの賃金は払う必要があります。労働基準法24条は賃金の全額払いを定めており、罰金や違約金として差し引くことはできません(同法16条)。退職の場合に権利者から請求があれば、7日以内に賃金を払い、本人に属する金品を返す必要もあります(同法23条)。支払いの記録は残しておきます。

失踪した外国人を雇った会社にも罰則はありますか?

あります。在留資格で認められていない仕事をさせると、雇った会社は不法就労助長罪に問われます。刑の引き上げも決まっているので、採用のときは在留カードと指定書を必ず確かめます。

登録支援機関に委託していれば、届出も任せられますか?

届出の義務は、受入れ機関である会社にあります。支援機関に経緯の整理を手伝ってもらっても、期限と内容は会社が確かめます。書類の作成を外部に有償で頼むなら、行政書士に依頼します(改正行政書士法、2026年1月1日施行)。

この記事の編集方針と出典

  • 制度・数値は、出入国在留管理庁・厚生労働省・所管省庁・自治体などの公表資料で確認し、時点を書いています(確認日:2026年10月14日)。
  • 制度は改正されることがあります。申請の前に、必ず最新の公表資料で確認してください。
  • 「想定ケース」は、よくある相談をもとに編集部が再構成したもので、実在の企業・人物の発言ではありません。
  • 特定技能のりあい窓口は、掲載している人材紹介会社・登録支援機関から紹介手数料を受け取る場合があります。手数料の有無で、ご提案の順番や内容は変えません。
  • 誤りにお気づきの場合は、下のフォームからお知らせください。確認のうえ修正します。

出典

  1. 出入国在留管理庁「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 中間報告書」(2023年5月11日)
  2. 出入国在留管理庁「技能実習生の失踪防止対策について」(2026年10月確認)
  3. 出入国在留管理庁「技能実習生の失踪防止対策の施策(概要)」(2026年7月)
  4. 出入国在留管理庁「失踪事案の現状」(2026年7月(速報値))
  5. 出入国在留管理庁「技能実習生の支払費用に関する実態調査について(結果の概要)」(2022年7月26日公表)
  6. 出入国在留管理庁「技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム 調査・検討結果概要」(2019年)
  7. 出入国在留管理庁「外国人技能実習生の失踪を発生させないために」(受入れ機関向けリーフレット)(2026年10月確認)
  8. 出入国在留管理庁「危険な誘い」(リーフレット)(2026年10月確認)
  9. 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人の転職状況」(2025年8月末集計・暫定値)
  10. 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」(2026年10月)
  11. 出入国在留管理庁「特定技能所属機関からの随時届出に関連してお問い合わせの多い事項について(Q&A)」(2025年6月)
  12. 出入国在留管理庁「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」(2026年10月確認)
  13. 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(2025年4月1日一部改正)
  14. e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(2026年10月確認)
  15. e-Gov法令検索「行方不明者発見活動に関する規則」(2026年10月確認)
  16. e-Gov法令検索「労働基準法」(2026年10月確認)
  17. 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」(2026年10月確認)
  18. 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(2026年5月29日改正を反映)
  19. 出入国在留管理庁「育成就労制度に関するQ&A」(2026年10月確認)
  20. 出入国在留管理庁「特定技能1号(外食業分野)の審査状況」(2026年9月10日掲載)

最終更新:(2026年10月版)

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