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特定技能で会社がやってはいけないこと一覧|パスポートの預かり・強制貯金など
預かる・積み立てる・外出を許可制にする。善意でも違法になる行為と、決めてよいルールの境目
文・構成:特定技能のりあい窓口 編集部最終更新:情報の確認日:(数値ごとに時点を記載)出典:公的機関の公表資料(ページ末尾に一覧)
特定技能の外国人を受け入れた会社から、「本人に頼まれてパスポートを預かっている」「寮の門限は決めてよいのか」という相談が続いています。特定技能の禁止事項は、労働基準法などで罰則つきで禁じられていること、特定技能の受入れ基準として禁じられていること、社内ルールとして決めてよいことの3つに分けると整理できます。この記事では、パスポートの預かり、強制貯金、携帯電話の制限、寮の門限と外泊のルールについて、どこからが違法になるのかを条文と公的資料で示し、今あるルールを見直す手順まで解説します。
- パスポート・在留カードは、本人が頼んでも預からない:外国人雇用管理指針は保管しないことを求め、特定技能の基準省令は「取り上げる行為」を受入れ機関の欠格事由に挙げています。本人だけが鍵を持つ保管場所に切り替えます。
- 強制貯金・違約金・前借金の相殺は罰則つきの禁止:労働基準法16〜18条に違反すると、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。「辞めたら罰金」の約束も違約金に当たります。
- 決めてよいのは「全員に同じ」で「手続きを踏んだ」ルール:勤務中のスマートフォンの使用制限は就業規則で決められます。寮の外出・外泊を会社の許可制にすることは禁止で、門限などは寄宿舎規則の手続きが必要です。
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この記事の目次
特定技能の禁止事項は3つの層で考える:法律・受入れ基準・社内ルール
特定技能の外国人に対して会社がしてはいけないことは、3つの層に分けると迷いません。1つ目は、労働基準法などで罰則つきで禁じられている行為。2つ目は、特定技能の受入れ基準として禁じられている行為。3つ目が、会社が社内ルールとして決めてよいことです。
見落とされやすいのは2つ目の層です。パスポートの取上げや外出の不当な制限は、受入れ機関になれない理由(欠格事由)として省令に書かれています。契約を結ぶ日から5年さかのぼって見られるため、一度の行為が次の採用にまで響きます。
図1会社の行為を3つの層に仕分ける
- ① 法律で禁止(罰則あり)強制労働、違約金・損害賠償額の予定、前借金と賃金の相殺、強制貯金など。労働基準法5条・16〜18条。最も重い5条の違反は、1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金の対象です。
- ② 特定技能の基準で禁止旅券・在留カードの取上げ、外出など私生活の自由の不当な制限、報酬の不払い、届出の不履行など。契約を結ぶ日の前5年以内にあると、受入れ機関になれません。
- ③ ルールとして決めてよい勤務中のスマートフォンの使用制限、寮の共用部の使い方など。日本人を含む全員に同じルールで、就業規則や寄宿舎規則の手続きを踏むことが条件です。
「本人のため」「本人が頼んだ」は理由にならない
問題になりやすいのは、悪意のない行為です。「なくすと困るからパスポートを預かる」「仕送りで使い切らないよう、給与の一部を積み立てる」。どちらも本人を思っての行為かもしれません。それでも、外国人雇用管理指針は、旅券や在留カードを保管しないこと、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせないことを事業主に求めています(第四の二の7・3)。本人の希望による例外は書かれていません。
違反したときに起きること
①の層は刑事罰の対象です。②の層は、受入れそのものが止まる原因になります。基準省令2条1項4号リは、契約を結ぶ日の前5年以内またはその後に「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者」を受入れ機関から外しています。例として11の行為が並び、暴行・脅迫・監禁、旅券や在留カードの取上げ、報酬の不払い、私生活の自由の不当な制限、保証金や違約金の契約、届出の不履行などが含まれます。次の章から、日常のルールに関わりやすいものを順に見ていきます。
パスポートの預かりは禁止:本人が頼んでも会社で保管しない
パスポート(旅券)と在留カードは、本人が持つものです。会社の金庫で預かることは、本人の希望があっても避けてください。根拠は3つあります。
図2パスポート・在留カードを預からない3つの根拠
- 1外国人雇用管理指針
「事業主は、外国人労働者の旅券、在留カード等を保管しないようにすること」と定めています(第四の二の7)。
- 2特定技能の基準省令
欠格事由の例に「外国人の旅券又は在留カードを取り上げる行為」を挙げています(2条1項4号リ(2))。
- 3入管法23条2項
中長期在留者は在留カードを「常にこれを携帯していなければならない」とされています。会社が預かると、本人がこの義務を守れません。
技能実習では罰則つき。制度が変わっても結論は同じ
技能実習法48条1項は、技能実習生の旅券や在留カードの保管を禁じています。本人の意思に反して保管した者は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(111条5号)。特定技能に同じ罰則の条文はありません。ただし前の章のとおり、取り上げる行為は受入れ機関の欠格事由です。技能実習から特定技能に移った人を受け入れる場合も、「預からない」という結論は変わりません。
預かる代わりにできること
本人が預けたい理由が「なくすのが怖い」「寮の相部屋で心配」なら、その不安に合わせて会社が用意できることがあります。
- 寮の各部屋や更衣室に、本人だけが鍵を持つロッカーを用意する
- なくしたときの連絡先(警察、自国の大使館・領事館、在留カードの再交付を申請する地方出入国在留管理官署)を、母語の資料で渡す
- 採用時の確認は原本を見て行い、写しを取るなら目的・見られる人・保管期間を決める(原本はその場で返す)
ハローワークへの外国人雇用状況の届出では、在留カードの確認は必要ですが、写しの添付は求められていません。
外国人の給与からの強制貯金は禁止:積立・違約金・前借金の相殺
給与の一部を会社が積み立てる、辞めたら罰金を取る、渡航費を貸して毎月の給与と相殺する。この3つは、労働基準法で罰則つきで禁じられています。外国人かどうかに関係なく、すべての労働者に適用されるルールです。
図3労働基準法が禁じる「お金の約束」
- 強制貯金(18条1項)「労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない」。給与天引きの積立や、通帳を会社が持つ形が当たります。
- 違約金・賠償予定(16条)「1年以内に辞めたら研修費を返す」「途中退職は罰金◯万円」。額をあらかじめ決めておく約束そのものが禁止です。
- 前借金の相殺(17条)渡航費や入社準備金を貸し、毎月の給与と差し引きで回収する形。貸すこと自体ではなく、賃金との相殺が禁じられています。
- 全額払い(24条)税・社会保険料など法令に定めがあるもの、または労使協定で決めたもの以外は、給与から差し引けません。
本人が希望する社内預金にも条件がある
18条は、労働者の委託を受けて会社が貯蓄金を管理する場合について、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面の協定と、労働基準監督署への届出を求めています。協定も届出もなく、給与から自動で積み立てる仕組みは作れません。仕送りの計画を手伝いたいなら、本人名義の口座での積立など、お金が本人の手元に残る方法を案内しましょう。
契約書に紛れ込みやすい「違約金」
支援の運用要領は、事前ガイダンスで説明する「違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」の例として、失踪したときの違約金のほか、次のような契約を挙げています。地方出入国在留管理局や労働基準監督署などへ法令違反を相談すること、休日に許可を得ずに外出すること、作業時間中にトイレなどで離席することを禁じ、その違約金を定める契約です。
保証金を取られていないこと、違約金の契約がないことは、本人の在留の基準(上陸基準省令)でもあります。額の大小にかかわらず、こうした条文は雇用契約書や誓約書に入れないでください。支援費や渡航費など費用の負担は、特定技能外国人に負担させてはいけない費用で費用ごとに整理しています。
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外国人の携帯電話の禁止は違法になるか:勤務中の制限と私生活の線引き
答えは「時間」で分かれます。勤務中の私用スマートフォンの使用を制限することは、日本人を含む全員に同じルールなら、就業規則で決められます。一方、勤務時間外の所持を禁じたり、取り上げたりすることは、私生活の自由を不当に制限する行為になりえます。
図4スマートフォンのルール:勤務中と勤務外の線引き
勤務中・職場:決めてよい
- 衛生・安全のため、作業場や客室への持込みを禁じる
- 休憩時間に使う場所を決める
- お客様や社内の写真・情報をSNSに載せない
- 運転中・機械操作中は使わない
就業規則に理由と範囲を書き、全員に同じ内容で適用します。常時10人以上の労働者を使用する場合、就業規則の作成と届出は義務です。
勤務外・寮や自宅:決めてはいけない
- 端末を預かる・取り上げる
- 所持や契約そのものを禁じる
- 夜間の通話や家族・友人との連絡を禁じる
- 違反したら罰金を取る
基準省令は「外国人の外出その他私生活の自由を不当に制限する行為」を、受入れ機関の欠格事由の例に挙げています。
携帯電話は、支援で「用意を手伝うもの」
1号の義務的支援には、銀行口座や携帯電話など、生活に必要な契約の支援が入っています。契約を手伝う一方で使用を禁じるのは、筋が通りません。相談・苦情への対応も、本人が十分理解できる言語で連絡できることを前提にしています。
技能実習法には明文の罰則がある
技能実習法は、解雇や制裁金などの不利益を示して、実習時間以外の通信・面談・外出を禁じると告げることを罰しています。6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です(111条6号)。特定技能に同じ条文はありませんが、「勤務時間外の連絡と外出は本人の自由」という考え方は共通です。
就業規則に書くときの3つの条件
- 理由(衛生・安全・情報管理)と、範囲(場所・時間)を具体的に書く
- 日本人の社員も含め、同じ職場の全員に適用する
- 違反時に減給するなら、1回の額は平均賃金1日分の半額まで、総額は1回の給与支払いの総額の10分の1までにする(労働基準法91条)
寮のルールはどこまで決められるか:門限・外泊・来客の線引き
寮のルールの線引きは、その住まいが労働基準法の「事業の附属寄宿舎」に当たるかで変わります。当たる場合、外出や外泊を会社の許可制にすることは禁じられています。起床・就寝・外出・外泊に関するルールは、寄宿する人の過半数代表の同意を得て「寄宿舎規則」にし、労働基準監督署に届け出ます。
「寄宿舎」に当たるかの目安
福井労働局の資料は、通達(昭和23年基発508号)をもとに次の3点で判断するとしています。相当人数が宿泊しているか。便所・炊事場・浴室が共同というだけでなく、一定の規律のもとで起居寝食を共にしているか。事業経営の必要上、その一部として設けられているか。社宅のようにそれぞれが独立して生活するものや、福利厚生施設として設けるアパート形式のものは含まれません。
図5寄宿舎に当たる寮で、決めてよいルール・手続きが必要なルール・決めてはいけないルール
| ルールの例 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 外出・外泊を会社の許可制にする | 決めてはいけない | 事業附属寄宿舎規程4条1号 |
| 寮の行事や勉強会への参加を強制する | 決めてはいけない | 同4条2号 |
| 来客・面会を一律に禁じる | 決めてはいけない(共同の利益を害する場所・時間は制限できる) | 同4条3号 |
| 寮長・室長を会社が指名する | 干渉してはいけない | 労働基準法94条2項 |
| 門限(玄関の施錠時刻)・就寝時刻 | 寄宿舎規則で定める(過半数代表の同意と届出) | 労働基準法95条1項1号・2項 |
| 食事、ごみ出し・清掃・火気の扱い | 寄宿舎規則で定める | 同95条1項3〜5号 |
| 門限を破ったら罰金を取る | 決めてはいけない | 上陸基準省令・基準省令(不当な金銭の移転を予定する契約)、支援の運用要領の例 |
アパートや社宅なら、決められることはさらに少ない
1人ずつ独立して暮らすアパートの借上げや社宅は、上の目安では寄宿舎に当たりません。会社がお願いできるのは、賃貸借契約や地域のルール(ごみ出し・騒音)を守ってもらうことが中心です。門限や外泊の制限、来客の禁止は、私生活への介入そのものになります。
門限の代わりに「安全の連絡」を決める
門限を置きたい理由が「夜に何かあったら」という心配なら、外出の許可ではなく、帰りが遅くなる日は知らせてほしい、という依頼の形にできます。緊急時の連絡先も母語で掲示しておきます。寄宿舎に当たる寮でこれを規則にするなら、95条の手続きを踏みます。書き方に迷ったら、所轄の労働基準監督署に確認してください。
特定技能ならではの禁止事項:業務の範囲・派遣・宿泊の接待
特定技能には、在留資格の仕組みから来る禁止事項もあります。罰則の有無にかかわらず、守らなければ受入れの基準を満たさなくなります。
図6特定技能の受入れ基準から来る6つの「してはいけない」
- 1分野の業務以外を主にさせる
関連する業務に付随的に就くことはできても、専ら関連業務に従事させることは認められません(宿泊分野の要領など)。
- 2派遣で受け入れる
派遣が認められるのは農業と漁業だけです。飲食料品製造業などの要領は、違反すると以後5年間受け入れられないとしています。
- 3国籍で待遇に差をつける
報酬は日本人と同等以上。国籍を理由に、報酬・教育訓練・福利厚生施設の利用で差別してはいけません。
- 4一時帰国の休暇を拒む
本人が一時帰国を希望したら、必要な有給休暇を取得させることが雇用契約の基準です。
- 5支援の費用を本人に負わせる
義務的支援の費用は、直接・間接を問わず本人に負担させられません。
- 6届出を怠る
随時届出(14日以内)や年1回の定期届出の不履行・虚偽は、欠格事由の例(4号リ(9))です。
宿泊分野は「接待をさせない措置」が2026年5月から基準に
宿泊分野の告示は、1号・2号の外国人に、風営法2条3項の「接待」を行わせないことを求めています。接待とは「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」です。2026年4月22日公布・5月22日施行の改正で、「接待を行わせないための必要な措置を講じていること」も基準に加わりました。専ら異性を同伴する客の宿泊に使われる施設(風営法2条6項4号)で働かせることもできません。宴会場での配膳や料理の説明と、客席でのもてなしの境目を、担当表や手順書で決めておきましょう。
支援の抜けも「してはいけない」に入る
定期面談を3か月に1回以上行わない、支援計画どおりに支援しない、といった不備は、指導や改善命令の対象になりえます。委託していても会社に残る責任は、支援が不十分だった場合のリスクで解説しています。
特定技能の禁止事項一覧:根拠と罰則・受け入れへの影響
ここまでの禁止事項を1つの表にまとめました。「罰則・影響」の欄の「欠格事由」は、基準省令2条1項4号リに当たり、契約を結ぶ日の前5年以内にあると受入れ機関になれないことを指します。
| してはいけないこと | 主な根拠 | 罰則・影響 |
|---|---|---|
| 暴行・脅迫・監禁などで働かせる | 労働基準法5条、基準省令4号リ(1) | 1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金。欠格事由 |
| 旅券・在留カードの取上げ・保管 | 基準省令4号リ(2)、外国人雇用管理指針 | 欠格事由 |
| 報酬の一部または全部の不払い | 基準省令4号リ(3)、労働基準法24条 | 欠格事由。24条違反は30万円以下の罰金 |
| 外出・通信など私生活の自由の不当な制限 | 基準省令4号リ(4)、労働基準法94条1項、事業附属寄宿舎規程4条 | 欠格事由 |
| 違約金・損害賠償額の予定 | 労働基準法16条、上陸基準省令、基準省令2条1項7号 | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 前借金と賃金の相殺 | 労働基準法17条 | 同上 |
| 強制貯金・貯蓄金の管理 | 労働基準法18条1項、外国人雇用管理指針 | 同上 |
| 保証金の徴収・財産の管理 | 上陸基準省令、基準省令2条1項6号・4号リ(7) | 欠格事由。知りながら契約することも不可 |
| 婚姻・妊娠・出産を退職理由とする定め | 男女雇用機会均等法9条 | 定めは禁止。妊娠中・産後1年以内の解雇は原則無効 |
| 国籍を理由とする差別的取扱い | 労働基準法3条、基準省令1条1項 | 6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 義務的支援の費用の本人負担 | 基準省令2条1項 | 受入れ基準を満たさない |
| 届出の不履行・虚偽 | 基準省令4号リ(9)、入管法 | 欠格事由。罰金・過料の対象になりうる |
| 派遣での受け入れ(農業・漁業以外) | 分野別の告示・要領 | 分野により以後5年間受け入れ不可 |
| 宿泊分野での接待 | 宿泊分野の告示、風営法2条3項 | 受入れ基準を満たさない |
どの行為も、気づいた時点でやめ、登録支援機関や地方出入国在留管理官署に相談してください。
社内ルールを見直す手順とチェックリスト
今あるルールは、次の6つの手順で見直せます。書き出しと仕分けまでなら、半日ほどで終わります。
- 書面と口頭のルールを全部書き出す
就業規則、寮の掲示、雇用条件書、誓約書、LINEでの連絡、現場で口頭で伝えているルールまで集めます。
- 3つの層に仕分ける
法律で禁止/特定技能の基準で禁止/決めてよい、に分けます。迷ったら「本人の生活時間に踏み込むか」で考えます。
- 「外国人だけ」のルールを探す
日本人の社員に適用していないルールは、理由を説明できなければ外します。
- 必要な手続きをとる
就業規則の変更(過半数代表の意見聴取と届出)、寄宿舎規則(同意と届出)、給与から差し引く項目の労使協定を整えます。
- 本人が分かる言語で説明する
変更点を母語や平易な日本語の資料で示し、質問の時間をとります。署名を集めるより、理解を確かめることを優先します。
- 定期面談で運用を確かめる
3か月に1回以上の定期面談で、ルールに困っていないかを聞き、記録に残します。
今日確かめたい8つの項目
- 金庫や事務所の引き出しに、本人のパスポート・在留カードがない
- 給与から、法令と労使協定にない控除をしていない
- 雇用契約書・誓約書に、違約金・罰金・積立の条文がない
- 勤務時間外のスマートフォンの所持や使用を制限していない
- 寮の外出・外泊を許可制にしていない
- 寄宿舎に当たる寮なら、寄宿舎規則を作って届け出ている
- 外国人だけに適用されるルールがない
- 宿泊分野なら、接待をさせない配置と手順を決めている
契約や費用をめぐる行き違いの典型は特定技能の契約トラブル事例、受け入れ全体でつまずきやすい点は特定技能の受け入れでよくある失敗10にまとめています。採用の段階の線引きは国籍・年齢で差別しない採用を参考にしてください。委託先の選び方から確かめたい場合は、特定技能の会社選びの総合ガイドが入口になります。
想定ケース:温泉旅館(従業員38人)の専務取締役が、寮のルールを22項目から14項目に絞った理由
想定ケース(利用イメージ)について:この章は、特定技能の会社選びでよく寄せられる相談をもとに、編集部が場面を再構成した想定インタビューです。実在の企業・人物の発言ではありません。数値は公的資料にもとづく目安です。
温泉旅館(従業員38人)の専務取締役(50代・男性)を想定したインタビューです。特定技能(宿泊)の4人を受け入れて1年がたち、寮のルールとパスポートの扱いを見直した場面を描いています。
- 寮のルール22項目を14項目に整理した。外泊の許可制など8項目を削り、門限を含む3項目は寄宿舎規則として過半数代表の同意を得て届け出た
- 金庫で預かっていた4人分のパスポートを返し、各部屋に鍵付きのロッカーを置いた
- 宴会場の担当表に「配膳と料理の説明まで」と書き、仲居・調理場の社員にも同じ線を共有した
――見直しで、何が変わりましたか。
寮の決まりが22項目から14項目になりました。消したのは「外泊は前日までに専務の許可」「異性の来訪禁止」「22時以降の通話禁止」など8つです。残した門限は寄宿舎規則にして、4人を含む入居者の代表の同意をもらい、労働基準監督署に届けました。パスポートも全員に返しています。
――そもそも、なぜ寮に決まりがたくさんあったのですか。
寮は30年前に建てた住み込み用の建物で、風呂と台所が共同です。昔の若い住み込みさん向けの決まりが、そのまま残っていました。特定技能の4人が来たとき、総務が「念のため」と足したものもある。正直に言うと、私も中身を読み返したことはありませんでした。
――見直すきっかけは何でしたか。
登録支援機関の担当の方です。定期面談のあと「パスポートを金庫で預かっていますね」と言われました。本人たちに頼まれたので、と答えたら、省令の欠格事由の条文を印刷して見せてくれた。「取り上げる行為」の例に入っていて、本人の希望は関係ない。5年さかのぼって見られると聞いて、背中が冷たくなりました。
――社内の反発はありませんでしたか。
夜が心配だから門限は残したい、という声はありました。そこで担当の方と、消すルールと、手続きを踏めば残せるルールを表に分けたんです。門限は寄宿舎規則にすれば決められる。でも外泊の許可制はだめ。線がはっきりしたので、古株の仲居頭にも説明しやすかった。耳の痛いことを先に言ってくれる会社なら、任せていいと思いました。
――運用で苦労した点はありますか。
宴会です。2026年5月から、宿泊分野では接待をさせない措置が基準に入りました。お客様に「一杯どう」と勧められる場面は、うちでは珍しくありません。担当表に「配膳と料理の説明まで。同席の誘いは近くの社員が引き取って断る」と書き、4人には母語の資料で伝えました。最初の繁忙期は、私が宴会場の入口に立っていましたよ。
――これから見直す会社に伝えたいことは。
まず全部書き出すことです。掲示物、誓約書、LINEの連絡まで集めたら22項目ありました。並べると、外国人だけに向けた決まりが3つ見つかった。日本人の若手にも同じことを言えるか。そう考えると、だいたい答えが出ます。
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よくある質問
寮の門限を決めてもいい?
寮が「事業の附属寄宿舎」に当たるなら、門限などの外出に関する事項は寄宿舎規則で定められます。その場合は寄宿する人の過半数代表の同意を得て、労働基準監督署に届け出ます。ただし、外出や外泊を会社の許可制にすることは事業附属寄宿舎規程4条で禁じられています。それぞれが独立して暮らす社宅やアパートでは、門限は私生活への介入になりえます。
本人から「パスポートを預かってほしい」と頼まれたら、どうすればいいですか。
預からずに、本人だけが鍵を持つロッカーなどを用意してください。外国人雇用管理指針は旅券や在留カードを保管しないことを求め、特定技能の基準省令は取り上げる行為を欠格事由に挙げています。在留カードには常に携帯する義務もあります。
採用時に在留カードのコピーを取って保管してもいいですか。
確認のために写しを取ることは、原本を預かることとは別の行為です。写しは個人情報として、目的・見られる人・保管期間を決めて管理します。なお、ハローワークへの外国人雇用状況の届出では、在留カードの確認は必要ですが、写しの添付は不要です。
仕事中のスマートフォンの使用を禁止してもいいですか。
衛生・安全・情報管理などの理由で、勤務中の私用を制限することはできます。日本人を含む全員に同じルールとし、就業規則に書いてください。休憩時間や勤務時間外の所持・使用まで禁じたり、端末を取り上げたりすることは避けます。
寮に友人や恋人を招くことを禁止できますか。
一律の禁止はできません。寄宿舎に当たる寮では、共同の利益を害する場所と時間を除き、面会の自由を制限することが禁じられています(事業附属寄宿舎規程4条3号)。相部屋や深夜の共用部など、ほかの入居者に影響する場面のルールにとどめます。交際そのものを禁じることは、私生活の自由の制限です。
「1年以内に辞めたら罰金」と約束してもらえますか。
できません。労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約は、労働基準法16条で禁じられ、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。早期退職への備えは、紹介会社との返金規定など会社どうしの契約で手当てします。
妊娠したら帰国してもらう、という決まりは作れますか。
作れません。男女雇用機会均等法9条は、婚姻・妊娠・出産を退職理由として予定する定めと、妊娠・出産などを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています。1号の通算5年については、休業の際に会社が遅滞なく受入れ困難の届出をしておき、満了の3か月前から満了までに申し出れば、産前産後休業や育児休業の期間を除けます。
禁止事項に違反すると、どうなりますか。
労働基準法の違反は刑事罰の対象です。特定技能では、旅券の取上げや私生活の自由の不当な制限などが受入れ機関の欠格事由とされ、契約を結ぶ日の前5年以内にあると受入れ機関になれません。気づいたらすぐにやめ、登録支援機関や地方出入国在留管理官署に相談してください。
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この記事の編集方針と出典
- 制度・数値は、出入国在留管理庁・厚生労働省・所管省庁・自治体などの公表資料で確認し、時点を書いています(確認日:2026年10月14日)。
- 制度は改正されることがあります。申請の前に、必ず最新の公表資料で確認してください。
- 「想定ケース」は、よくある相談をもとに編集部が再構成したもので、実在の企業・人物の発言ではありません。
- 特定技能のりあい窓口は、掲載している人材紹介会社・登録支援機関から紹介手数料を受け取る場合があります。手数料の有無で、ご提案の順番や内容は変えません。
- 誤りにお気づきの場合は、下のフォームからお知らせください。確認のうえ修正します。
出典
- e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「労働基準法」(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「事業附属寄宿舎規程」(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(2026年10月確認)
- 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(令和8年5月29日告示による改正を反映)
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(令和7年4月1日一部改正)
- 福井労働局「届出方法について(寄宿舎)」(参考資料)(2026年10月確認)
- 出入国在留管理庁「特定技能制度の宿泊分野に特有の事情に鑑みて定める基準の改正について」(2026年5月22日施行)
- 出入国在留管理庁「宿泊分野に特有の事情に鑑みて定める基準」新旧対照表(2026年4月22日公布)
- 出入国在留管理庁「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領(宿泊分野)」(2024年2月15日一部改正)
- 出入国在留管理庁「特定技能制度」(2026年10月)
最終更新:(2026年10月版)
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