特定技能のりあい窓口

https://tokutei-noriai.blog/2026/10/15/mental-trouble/ 印刷日:2026年10月15日

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  • 支援・定着
  • 2026年10月版

外国人社員のメンタルヘルスとトラブル対応|孤立・ホームシック・人間関係

「大丈夫です」の裏にある変化に気づき、母国語での聞き取りと専門窓口につなぐまでを時期ごとに

外国人社員の元気がない、遅刻が増えた、休憩室で1人でいる。気になっても、言葉の壁があって声をかけにくい。そんな悩みを持つ会社は少なくありません。出入国在留管理庁の2024年の調査では、在留外国人の56.9%が孤独を感じることがあると答え、特定技能の人は「ときどきある」が外国人全体より11ポイント高い35.7%でした。この記事では、外国人社員のメンタルヘルスとトラブル対応を、入社直後から1年以降までの時期別に整理し、変化のサイン、声かけの例、専門窓口へのつなぎ方を、2026年10月時点の公的資料にもとづいて示します。

この記事の結論
  • 不調は時期ごとに形が変わる:入社直後はホームシックと生活の不安、3〜6か月は仕事と人間関係の壁、半年以降は将来や家族の悩みが出やすくなります。時期に合った声かけを用意しておきます。
  • 「大丈夫です」をうのみにしない:遅刻・食欲・表情・連絡の変化を見て、1対1で短く聞きます。詳しい話は通訳を介して母国語で聞くのが基本です。
  • 専門窓口へは「一緒に」つなぐ:こころの耳、こころの健康相談統一ダイヤル、外国語の案内もあるよりそいホットラインなど、公的な窓口を本人の同意を得て一緒に使います。命の危険が迫るときは119番・110番です。
  • 休むときの手続きも先に知っておく:私生活上の病気などで1か月以上働けないときは、14日以内に受入れ困難に係る届出が必要です。休業中は健康保険の傷病手当金を使えることがあります。

相談は無料です。条件に合う会社を最大3社までご紹介します。最終的に選ぶのは御社です。

この記事の目次

結論:外国人社員のメンタルヘルスは「時期」と「サイン」で見る

外国人社員の心の不調は、入社からの時期によって原因も表れ方も変わります。時期ごとに起きやすいことを知っておけば、変化に早く気づけて、声かけの言葉も選びやすくなります。

特定技能の人は、母国の家族と離れ、慣れない言葉と土地で働いています。出入国在留管理庁の調査(2024年9〜10月)で、孤独を「ときどき」感じる人は、特定技能では35.7%でした。外国人全体の24.7%を上回っています。会社が何もしなくても自然に慣れる、とは考えないほうが安全です。

時期別に起きやすいこと

図1入社からの時期と、起きやすい不調・トラブル

  1. 生活の不安とホームシック

    手続き、食事、通信、気候の違いが重なります。夜に母国と連絡を取り続け、寝不足になる人もいます。

  2. 仕事の壁と言葉の疲れ

    覚えることが多く、注意される場面も増えます。「分かった」と言ったのに分かっていなかった、というすれ違いが出始めます。

  3. 人間関係と給与への不満

    職場の人間関係、手取り額や控除への疑問、同じ国の知人との比較から、不満がたまりやすい時期です。

  4. 将来と家族の悩み

    家族の病気や借金、転職の誘い、在留期間の更新など、先の見通しに関わる悩みが出てきます。

  5. 慣れによる孤立と燃え尽き

    仕事に慣れて周りの気づかいが減る時期です。一時帰国の前後に、気持ちが大きく揺れる人もいます。

時期の区切りは目安です。3か月に1回以上の定期面談を、この流れに合わせて使うと、変化を拾いやすくなります。

会社が担うことと、担わないこと

会社の役割は、病気かどうかを判断することではありません。変化に気づき、話を聞き、本人が理解できる言語で専門の窓口や医療機関につなぐことです。診断や治療の判断は医師に任せます。役割の線を引いておくと、担当者が1人で抱え込まずに済みます。

見逃しやすい変化のサイン

不調のサインは、言葉より先に行動に出ます。日本語で「大丈夫です」と答えられても、それが本心とは限りません。仕事・生活・人づきあい・お金の4つの面で、ふだんとの違いを見ます。

ふだんとの違いに気づくためのサイン(例)
面サインの例気づきやすい人
仕事遅刻や小さなミスが増える。指示を聞き返さなくなる。ぼんやりしている時間が長い班長・ペアの先輩
生活昼食を抜く、食べる量が減る。眠れていない顔をしている。寮の部屋にこもる寮の管理者・同室の人
人づきあい同じ言語の仲間とも話さなくなる。休憩室に来なくなる。表情が乏しい同僚
お金給料の前借りや、副業の相談をしてくる。家族への送金の話が増える総務・支援機関
言葉何を聞いても「大丈夫です」「問題ありません」とだけ答える面談の担当者

1つのサインより「2つ以上の重なり」を見る

遅刻が1回あっただけで深刻だと決めつける必要はありません。目安は、2つ以上の面で変化が重なり、2週間以上続いていることです。班長・寮の管理者・総務が気づいたことを、週に1回、5分でよいので持ち寄る場を作ると、重なりが見えます。

お金の悩みは心の不調と結びつきやすい

家族への仕送りや、来日前の借金の返済に追われている人もいます。お金の悩みは、睡眠や仕事への集中に直結します。給与明細の控除の意味が分からないまま「減らされた」と思い込み、不満をため込んでいることもあります。控除の説明の仕方は外国人社員の給与トラブルの防ぎ方で扱っています。

図2仕事で困っていること(在留外国人のうち仕事をしている人)

  • 特にない46.3%
  • 給料が低い33.3%
  • 休みが取りにくい8.1%
  • 労働時間が長い7.7%
  • 採用・配属・昇進で日本人より不利に扱われている7.6%
困りごとの1位は給料です。手取りや控除への誤解も含め、お金の不安は早めに聞き取ります。出典:出入国在留管理庁「令和6年度 在留外国人に対する基礎調査報告書」(2024年9〜10月調査)

外国人社員のホームシックへの対応

ホームシックは、来日直後の1〜3か月に強く出やすく、多くは環境を整えることで和らぎます。原因は寂しさだけではなく、食事・通信・気候・生活の手続きといった具体的な不便が積み重なっていることがよくあります。

不便を1つずつ減らす

寮のインターネット環境は、家族と話すための生命線です。通信が不安定なら、最初に直します。母国の食材を買える店、母国語で受診できる医療機関の情報も、生活オリエンテーションで伝える項目です。省令は、本人が十分に理解できる言語で医療を受けられる医療機関に関する情報の提供を、支援の内容に含めています。

図3ホームシックを和らげる4つの環境づくり

  • 1通信

    寮のWi-Fiを安定させる。時差のある家族と話せる時間帯に、通話しやすい場所を用意する。

  • 2食事

    母国の食材店や料理店の情報を伝える。寮の台所の使い方と、共用のルールを一緒に決める。

  • 3季節

    初めての冬に備え、防寒具の買い方や暖房の使い方を伝える。日照時間の短さで気分が沈む人もいる。

  • 4見通し

    一時帰国できる時期や手順を、早めに示しておく。「いつ帰れるか分からない」不安を減らす。

どれも費用は小さく、入社前から準備できます。食事や祝日への配慮は、宗教や習慣とあわせて考えます。

一時帰国の見通しを示す

特定技能の雇用契約では、本人が一時帰国を希望した場合に、必要な有給休暇を取得させることが基準になっています。帰れる見通しがあるだけで、気持ちが落ち着く人は少なくありません。繁忙期を避けた時期を一緒に決めておきます。母国の祝日や食事への配慮は、宗教・食事・習慣への配慮で具体例を紹介しています。

長引くときは専門の窓口へ

環境を整えても、眠れない・食べられない状態が2週間以上続くことがあります。仕事のミスが目立って増えたときも同じです。寂しさだけの問題ではないかもしれません。会社だけで励まし続けず、この記事の後半で紹介する専門の窓口や医療機関につなぎます。

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声のかけ方:時期別の声かけの例

声かけは、1対1で、短い文で、答えやすい質問から始めます。人前で「元気ないね」と言われると、本人は面子を守るために「大丈夫です」と答えがちです。休憩明けや帰り際に、2〜3分の時間をとります。

時期別の声かけの例(やさしい日本語)
時期最初の一言次に聞くこと
入社〜1か月「よく眠れていますか」「ごはんは食べていますか」寮で困っていること。家族と連絡できているか
1〜3か月「仕事で、むずかしいことはどれですか」分からない言葉。聞きにくい人がいるか
3〜6か月「給料の明細で、分からないところはありますか」人間関係。休みは取れているか
半年〜1年「家族は元気ですか」将来の希望。困っているお金のこと
1年以降「最近、楽しいことはありましたか」疲れていないか。次の目標

「はい・いいえ」から「どれですか」へ

「困っていますか」と聞くと、答えは「いいえ」になりやすいものです。「どれがむずかしいですか」「何がいちばん大変ですか」のように、選んで答えられる聞き方に変えると、話が出てきます。気になる答えがあったら、その場で解決しようとせず、「もっと聞きたいので、通訳の人と一緒に話しましょう」と次の約束をします。

詳しい話は母国語で聞く

心の状態や家族の事情は、日本語では表しにくい話です。運用要領も、詳しい聞き取りは通訳を確保して行うよう求めています。登録支援機関の通訳を使うか、同僚以外の通訳を手配します。同じ職場の同僚を通訳にすると、話が広まるのを恐れて本音が出ないことがあります。

避けたい言葉

「日本ではこれが普通だから」「みんな我慢している」「つらいなら国に帰れば」。励ましや説明のつもりでも、相手を突き放す言葉になります。「がんばって」も、すでに限界まで頑張っている人には重く響きます。代わりに「話してくれてありがとう」「一緒に考えましょう」と返します。

外国人社員の孤立を防ぐ職場の仕組み

孤立は、個人の性格ではなく、職場の仕組みで防ぎます。定期面談、ストレスチェック、相談窓口の3つを組み合わせると、1人の担当者の勘に頼らずに変化を拾えます。

図4孤立を防ぐ3つの仕組み

  • 定期面談支援の担当者が3か月に1回以上、本人と上司のそれぞれに会う。本人には母国語で、生活と気持ちの変化を聞く。
  • ストレスチェック年1回、心理的な負担の程度を調べる。外国人社員には質問の意味を本人の言語で説明する。
  • 相談窓口社内・登録支援機関・公的窓口の3層で、いつでも話せる先を用意し、一覧を本人の言語で渡す。
3つがそろうと、「誰も気づかなかった」を防げます。出典:出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(2025年4月1日一部改正)、徳島労働局「ストレスチェック」(2026年10月確認)

面談の報告書を「読むだけ」にしない

定期面談を登録支援機関に委託していても、報告書の「特に問題なし」をうのみにしないことです。会社から見て気になる人がいれば、面談の前に伝え、聞いてほしい項目を足してもらいます。面談は本人と上司のそれぞれに行うので、上司として気づいた変化を話す場にもなります。

ストレスチェックは50人未満も2028年4月から義務に

厚生労働省の外国人雇用管理指針は、法令の定めに従い、外国人労働者にも検査を行うよう求めています。健康診断と、心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)です。ストレスチェックは、これまで50人未満の事業場では努力義務でした。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、2028年4月1日から50人未満の事業場でも義務になります(徳島労働局)。

小さな会社は地域産業保健センターを使う

労働者50人未満の事業場は、地域産業保健センターの支援を原則無料で受けられます。医師や保健師が、メンタルヘルスを含む健康の相談に応じます(労働者健康安全機構)。産業医がいない会社にとって、専門家に相談できる身近な窓口です。社内の相談体制の作り方は相談・苦情対応の体制づくりで詳しく扱っています。

外国人社員の人間関係トラブルへの対応手順

人間関係のトラブルは、双方から別々に、本人が理解できる言語で事情を聞くことから始めます。片方の言い分だけで判断すると、言葉の行き違いを「態度が悪い」と取り違えることがあります。在留外国人への調査でも、差別を受けた場面として「仕事をしているとき」を挙げた人が14.2%いました。

  1. 安全を確保し、いったん離す

    言い争いや手が出る心配があれば、持ち場や休憩の時間を分けます。どちらかを罰する意味ではないと伝えます。

  2. 別々に、通訳を介して聞く

    外国人社員には母国語で、日本人社員には日本語で、同じ質問をします。日時・場所・言われた言葉をそのまま記録します。

  3. 事実と受け止めを分ける

    「大きな声で注意された」は事実、「嫌われている」は受け止めです。両方を書き分け、行き違いがどこで起きたかを探します。

  4. ハラスメントに当たるかを確かめる

    2022年4月1日から、パワーハラスメントの防止措置はすべての事業主の義務です。社内の相談窓口の手順に沿って扱います。

  5. 再発を防ぎ、1〜2週間後に確かめる

    指示の出し方の見直し、配置の変更などを決め、双方に説明します。その後の様子を聞き、相談記録に残します。

よくあるトラブルの型

  • 指示の言い方がきついと受け取られる
  • 冗談のつもりのからかいが、差別と受け取られる
  • 寮での生活音や、ごみの出し方をめぐる行き違い
  • 同じ国の仲間どうしの、お金の貸し借り

最後の型は会社から見えにくいので、定期面談で「お金の貸し借りで困っていないか」を聞きます。契約や業者との間で起きやすいトラブルは特定技能の契約トラブル事例にまとめています。

日本人社員への説明も忘れない

トラブルの後は、日本人社員の側にも不安が残ります。何が行き違いの原因だったかを共有し、言い方の工夫を一緒に考えます。受け入れ前の説明の仕方は外国人受け入れ前の社内説明で紹介しています。

専門窓口へのつなぎ方

会社や支援機関だけで抱えず、早めに専門の窓口につなぎます。つなぐときは、本人の同意を得て、一緒に電話をかける、同行するなど「渡しっぱなし」にしないことが基本です。命の危険が差し迫っているときは、迷わず119番か110番に連絡します。

主な公的窓口(2026年10月確認)
窓口対象・内容受付
こころの耳 電話相談(0120-565-455)働く人などの、メンタルヘルスや過重労働による健康障害の相談。メール相談もある月〜金17:00〜22:00、土日10:00〜16:00(祝日・年末年始を除く)
こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)かけた所在地の都道府県・政令指定都市の公的な相談機関につながる曜日・時間は都道府県ごとに異なる(通話料あり)
よりそいホットライン(0120-279-338)ガイダンスで、外国語を含む専門的な対応を選べる24時間(無料)
地域産業保健センター労働者50人未満の事業場の事業者と労働者。医師・保健師の健康相談原則無料(日時は各センターに確認)
労働条件相談ほっとライン長時間労働・賃金など労働条件の相談。日本語と13言語平日17:00〜22:00、土日祝9:00〜21:00(無料)
外国人在留支援センター(0570-011000)在留・労働・人権などの機関が集まる。人権相談の窓口もある平日9:00〜17:00

図5相談を受けてから専門窓口につなぐまで

  1. 最後まで聞く途中で励ましたり、解決策を出したりせず、相談してくれたことに感謝を伝えます。
  2. 急ぎかどうかを見極める自分を傷つける話や、けが・急病があれば、すぐに119番か110番。1人にしません。
  3. 本人の同意を得る誰に伝えてよいか、どの窓口なら話せそうかを、本人と決めます。
  4. 一緒につなぐ電話を一緒にかける、受診に同行する、支援機関の通訳を手配する。番号を渡すだけで終わらせません。
  5. その後を見守る1週間後に様子を聞き、勤務時間の調整が必要かを決めます。相談記録に残します。
会社の役割は治療ではなく、安全を確かめて専門家に橋渡しすることです。

病院につなぐときの3つの準備

受診の前に、①症状がいつから、どんなふうか、②飲んでいる薬、③保険証(資格確認書類)、の3つを本人と確かめます。言葉が不安なら、支援機関の通訳を手配します。在留外国人への調査では、病院で言葉の問題への対応として「多言語翻訳機・アプリを利用した」特定技能の人が24.1%でした。簡単な受付は翻訳アプリでも進みますが、症状の説明には通訳がいると安心です。

本人が相談を嫌がるとき

「病院に行く」ことに強い抵抗を持つ人もいます。その場合は、まず会社の担当者と支援機関の担当者が一緒に話を聞き、こころの耳やよりそいホットラインのような電話窓口から始めます。会社の担当者自身が、対応の仕方をこころの耳に相談することもできます。

休むとき・帰国を考えるときの手続き

休業が長くなりそうなときは、会社の手続きと本人の収入の両方を早めに確かめます。特定技能では、在留に関わる届出の期限があるためです。

1か月以上働けないときは届出が必要

私生活上の病気やけがなどで、1か月以上活動できなくなることがあります。そのときは受入れ困難に係る届出を、事由が生じた日から14日以内に出します(出入国在留管理庁)。届出書は参考様式第3-4号で、1か月以上の活動未実施の場合は説明書(参考様式第5-14号)を添えます。業務中の病気やけがで休む場合も、1か月以上なら同じく届出の対象です。

休業中の収入:傷病手当金

業務外の病気やけがで療養のために働けないときは、健康保険の傷病手当金を受けられます(健康保険法1条・99条)。対象は、働けなくなった日から3日を過ぎた4日目以降です。仕事が原因の場合は、健康保険ではなく労災保険の対象になります。1日あたりの額は、直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割った額の3分の2が基本です。支給期間は、支給開始から通算して1年6か月です。手続きの流れを本人の言語で説明し、申請書の記入を手伝います。

帰国の判断は本人と医師の意見で

帰国を勧めるかどうかは、医師の意見と本人の意思で決めます。会社が一方的に決めることではありません。外国人雇用管理指針は、家族の住所などの緊急時の連絡先を把握しておくよう努めることを求めています。家族に連絡するときも、原則として本人の同意を得ます。日本政策金融公庫の調査(2025年2月公表)では、外国人従業員の退職があった企業の26.0%が、理由に「家族の事情のため」を挙げました。家族の事情は、前もって相談できる関係があるかどうかで、対応の幅が変わります。

待遇や関係づくりで転職を防ぐ方法は転職されない職場づくり、災害や事故のときの連絡網は災害・緊急時の外国人社員対応で扱っています。

想定ケース:農業法人(従業員25人)の代表が、入社3か月目の「大丈夫です」に気づけた理由

想定ケース(利用イメージ)について:この章は、特定技能の会社選びでよく寄せられる相談をもとに、編集部が場面を再構成した想定インタビューです。実在の企業・人物の発言ではありません。数値は公的資料にもとづく目安です。

野菜の施設栽培を行う農業法人で、特定技能の社員4人を雇う代表(40代)の想定インタビューです。1人の不調に早く気づけたことで、休まずに働き続けられました。

  • 変化に気づいてから、支援機関の通訳を介した面談まで3日、医療機関の受診まで10日
  • 本人は休業せず、2週間だけ勤務時間を1日2時間短くして回復した
  • その後の1年間、4人全員が在籍。定期面談で「最近眠れているか」を必ず聞くようになった

――気づいたことで、何が変わりましたか。

休ませずに済んだことです。異変に気づいてから10日で病院につながり、2週間だけ勤務を1日2時間短くしました。今は元どおり働いています。気づくのがあと1か月遅かったら、休業や帰国の話になっていたかもしれません。

――最初に何に気づいたのですか。

入社3か月目の男性が、昼休みに軽トラックの中で1人で過ごすようになったんです。前は同じ国の仲間と笑って食べていた。仕事のミスも少し増えました。収穫した箱の数を数え間違える、といった小さなものです。声をかけると「大丈夫です」。ただ、目が赤くて眠れていない顔でした。

――以前は、こうした変化にどう対応していましたか。

正直、何もしていませんでした。農繁期は全員が忙しいので、言葉の壁もあって、元気がないのは疲れのせいだと思っていた。定期面談は支援機関任せで、報告書を読むだけ。報告書にはいつも「特に問題なし」と書いてありました。

――どこで迷い、何が決め手になりましたか。

本人が大丈夫と言うのに、こちらが騒ぐのは失礼ではないか。そこで迷いました。決め手は、寮の管理をしている妻の一言です。夜中に部屋の明かりがずっとついている、と。昼の様子と夜の様子が重なったので、支援機関に連絡しました。担当の人は「確信がなくても、気になったら連絡をください。空振りでかまいません」と言ってくれて、気が楽になりました。

――ほかの社員には、どう説明しましたか。

本人の了解を得て、「家族のことで大変な時期なので、2週間だけ早く上がる」とだけ伝えました。病気や家族の詳しい事情は話していません。同じ国の仲間が、昼休みにまた一緒に食べようと誘ってくれたのが、いちばん効いたと思います。会社ができるのは、きっかけを作ることまでだと感じました。

――その後の対応で、工夫したことは。

支援機関の通訳を介して、母国語で話を聞いてもらいました。家族が病気で、仕送りが増え、夜に何度も電話をしていたそうです。眠れない日が続いていた。受診は支援機関の担当者が同行してくれました。会社としては、2週間の時短と、一時帰国の時期を前倒しで相談することを決めました。支援機関とは、月1回の電話で、気になる人がいないかを話すようにしました。今は月に1回、私が「最近眠れていますか」と聞くようにしています。答えが「はい」でも、顔を見て聞くことに意味があると感じています。

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よくある質問

外国人社員から深刻な相談を受けたら?

まず話を最後まで聞き、相談してくれたことに感謝を伝えます。その場で解決を約束せず、本人の同意を得て、登録支援機関の通訳を介した面談と、専門の窓口や医療機関につなぎます。命の危険が差し迫っているときは、迷わず119番か110番に連絡し、本人を1人にしません。対応した内容は相談記録に残します。

母国語でメンタルヘルスの相談ができる窓口はありますか?

厚生労働省の「まもろうよ こころ」は、よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)を紹介しています。ガイダンスで、外国語を含む専門的な対応を選べます。登録支援機関の母国語の担当者や通訳も、最初の相談相手になります。労働条件に関わる悩みなら、労働条件相談ほっとラインが日本語と13言語で受け付けています。

ホームシックで「帰国したい」と言われたら、どうすればよいですか?

すぐに退職の話に進めず、まず一時帰国で解決できないかを話し合います。特定技能では、本人が一時帰国を希望した場合に、必要な有給休暇を取得させることが雇用契約の基準です。帰国の時期を具体的に決めるだけで落ち着く人もいます。

外国人社員にもストレスチェックは必要ですか?

必要です。外国人雇用管理指針は、法令の定めに従い外国人労働者にも心理的な負担の程度を把握するための検査を行うよう求めています。2028年4月1日からは、50人未満の事業場でもストレスチェックが義務になります。質問の意味は本人が理解できる言語で説明します。

心の不調で長く休むとき、会社がすべき手続きは?

1か月以上活動できなくなったときは、事由が生じた日から14日以内に、受入れ困難に係る届出を出入国在留管理庁に出します。あわせて、本人が健康保険の傷病手当金を申請できるよう手続きを手伝います。支給は働けなくなってから4日目以降が対象です。

日本人社員とのトラブルで、双方の言い分が食い違うときは?

別々に、同じ質問で、それぞれが理解できる言語で聞きます。言われた言葉、日時、場所を記録し、事実と受け止めを分けます。どちらかを悪者にする前に、指示の言い方や言葉の行き違いがなかったかを確かめます。

相談の内容を家族や同じ国の同僚に伝えてもよいですか?

原則として、本人の同意なく伝えません。心の不調や家族の事情は、とくに広まりやすく、本人を傷つけます。命に関わる危険があるときは、本人を守るために必要な範囲で関係者に伝えることも考えます。

この記事の編集方針と出典

  • 制度・数値は、出入国在留管理庁・厚生労働省・所管省庁・自治体などの公表資料で確認し、時点を書いています(確認日:2026年10月14日)。
  • 制度は改正されることがあります。申請の前に、必ず最新の公表資料で確認してください。
  • 「想定ケース」は、よくある相談をもとに編集部が再構成したもので、実在の企業・人物の発言ではありません。
  • 特定技能のりあい窓口は、掲載している人材紹介会社・登録支援機関から紹介手数料を受け取る場合があります。手数料の有無で、ご提案の順番や内容は変えません。
  • 誤りにお気づきの場合は、下のフォームからお知らせください。確認のうえ修正します。

出典

  1. 出入国在留管理庁「令和6年度 在留外国人に対する基礎調査報告書」(2024年9〜10月調査)
  2. 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」(2025年4月1日一部改正)
  3. 出入国在留管理庁「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」(2026年10月確認)
  4. 厚生労働省「相談窓口を探す:メンタルヘルスや健康」(2026年10月確認)
  5. 厚生労働省「まもろうよ こころ:電話相談窓口」(2026年10月確認)
  6. 厚生労働省「確かめよう労働条件:相談機関のご紹介(外国人労働者向け)」(2026年10月現在)
  7. 徳島労働局「ストレスチェック」(2026年10月確認)
  8. 労働者健康安全機構「地域窓口(地域産業保健センター)」(2026年10月確認)
  9. 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年告示(改正を含む))
  10. 岡山労働局「職場におけるパワーハラスメントの防止について」(2026年10月確認)
  11. 出入国在留管理庁「外国人在留支援センター」(2026年10月確認)
  12. e-Gov法令検索「健康保険法」(2026年10月確認)
  13. e-Gov法令検索「労働者災害補償保険法」(2026年10月確認)
  14. e-Gov法令検索「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令」(2026年10月確認)
  15. 日本政策金融公庫総合研究所「中小企業等における外国人雇用に関するアンケート」(2025年2月21日公表)

最終更新:(2026年10月版)

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