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年金と脱退一時金|外国人社員への説明のしかた
「年金は払いたくない」と言われたときの説明から、帰国後の請求と税の手続きまで、会社が伝えることを順番に
文・構成:特定技能のりあい窓口 編集部最終更新:情報の確認日:(数値ごとに時点を記載)出典:公的機関の公表資料(ページ末尾に一覧)
外国人社員から「年金は払いたくない」「国に帰ったらお金は戻るの?」と聞かれ、うまく答えられずに困っていませんか。厚生年金は国籍に関係なく加入する決まりで、本人だけを外すことはできません。一方で、加入期間が6か月以上ある人は、帰国後に脱退一時金を請求でき、2021年4月以降は最大60か月分が計算の対象です。この記事では、加入義務の根拠、脱退一時金の計算式と試算、請求の手順と期限、税の扱いを、本人にそのまま使える説明文の例とあわせて、2026年10月時点の日本年金機構などの資料で整理します。
- 年金に入るかは本人が選べない:法人の事業所で働く人は、国籍に関係なく厚生年金に入ります。保険料率は18.3%で本人と会社が半分ずつ負担し、会社は本人分も合わせて納める義務があります。
- 脱退一時金は最大60か月分:6か月以上加入して出国した人は、日本に住所がなくなってから2年以内に請求できます。厚生年金は「平均標準報酬額×支給率」で、60か月以上の支給率は5.5。20.42%が源泉徴収されます。
- 受け取ると加入期間は消える:特定技能2号などで日本に長くいる予定の人には、受け取らない選択肢もあります。会社は選択肢と期限を、本人が理解できる言葉で伝える役です。
- 説明は入社時と帰国前の2回:入社時は「なぜ引かれるか」、帰国前は「いつまでに・何を出すか」。文例と給与明細を使うと、天引きへの不満や請求漏れを防げます。
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この記事の目次
結論:年金は入る決まり。帰国したら脱退一時金で一部が戻る
外国人社員の年金は、本人が入るかどうかを選べるものではありません。会社(法人)で働く人は国籍に関係なく厚生年金に入り、毎月の給与から保険料を差し引きます。そのかわり、加入期間が6か月以上ある人が帰国すると、払った保険料の一部が「脱退一時金」として戻る仕組みがあります。
「払っても自分はもらえない」という不満の多くは、この仕組みを知らないことから生まれます。入社時と帰国前の2回、数字を使って説明できれば、天引きへの苦情や、帰国後の請求漏れを防げます。
図1外国人社員の年金:入社から帰国後までの流れ
- 入社:厚生年金に加入会社が資格取得の手続きをします。本人が「入らない」を選ぶことはできません。
- 在職中:給与から保険料を差し引く保険料率は18.3%で、本人と会社が半分ずつ負担します。加入中に初めて医師にかかった病気やけがで障害が残ったときは、要件を満たせば障害年金の対象になります。
- 退職・帰国:転出届を出して出国市区町村に転出届を出しておくと、請求のときに「日本に住所がない」ことを示す書類を別に出さずに済みます。
- 出国後2年以内:脱退一時金を請求日本年金機構に郵送か電子申請で請求します。6か月以上の加入が条件で、計算に使う月数の上限は60か月です。
- 受け取った後:税の手続き厚生年金の脱退一時金からは20.42%が源泉徴収されます。日本に住所がない人は、申告書を出して税を精算できます。
説明するのは会社の役目でもある
厚生労働省の外国人雇用管理指針は、帰国前の外国人労働者に、脱退一時金を請求できることと、受け取ると将来の年金の受給に影響し得ることを説明するよう求めています(努力義務)。年金事務所に任せきりにせず、最初の説明は会社がする、と決めておくと迷いません。
外国人社員の年金の加入義務:厚生年金か国民年金か
どちらの年金に入るかは、国籍ではなく働く場所で決まります。法人の事業所は、常時使う従業員がいれば厚生年金の適用事業所です(厚生年金保険法6条)。そこで働く外国人社員は、日本人と同じく厚生年金に入ります。
| 働く場所・期間 | 入る年金 | 保険料の納め方 |
|---|---|---|
| 法人の事業所(株式会社、農業法人、社会福祉法人など) | 厚生年金 | 給与から差し引き、会社が本人分と会社分をまとめて納める |
| 個人の事業所で、製造・建設・運送・販売など法律に並ぶ17種類の事業を常時5人以上で行う | 厚生年金 | 同上 |
| 上の2つに当たらず、任意の適用も受けていない個人の事業所 | 国民年金 | 本人が自分で納める |
| 入社前・退職後に日本に住んでいる期間(20歳以上60歳未満) | 国民年金 | 本人が自分で納める |
保険料は本人と会社で半分ずつ
厚生年金の保険料率は18.3%で、本人と会社が9.15%ずつ負担します。会社は本人の分も合わせて納める義務を負います(厚生年金保険法82条)。特定技能の人の賃金は月221.4千円(令和7年賃金構造基本統計調査)なので、標準報酬月額22万円で計算すると、本人の負担は月20,130円、会社の負担も同じ額です(計算)。
特定技能では、申請のたびに納付が確かめられる
特定技能の在留資格の変更・更新の申請では、社会保険料を納めているかを示す書類を出します。会社は健康保険・厚生年金保険料の領収証書の写しなど、国民年金に入っている本人は「被保険者記録照会(納付2)」などです(日本年金機構)。出入国在留管理庁のQ&A(Q43)は、加入すべき会社が未加入なら基準を満たさず、受け入れられないと答えています。
転職のすき間は国民年金
国民年金法は、日本に住む20歳以上60歳未満の人で厚生年金に入っていない人を、国籍を問わず国民年金の加入者としています。同じ分野で転職する人が、退職から次の入社まで日本に住んでいる間は、国民年金に入って自分で納めます。ここを未納のままにすると、次の会社での在留資格の変更申請で納付状況を示すときに困ります。Q&A(Q44)も、滞納がある場合はまず年金事務所などに相談し、必要な手続きを速やかにするよう求めています。退職の面談で、市区町村での手続きを伝えておきます。
図2年金と脱退一時金の主な数字
- 18.3%厚生年金の保険料率本人と会社が9.15%ずつ
- 6か月請求に必要な加入期間厚生年金・国民年金とも
- 60か月計算に使う月数の上限2021年4月以降の加入期間がある場合
- 2年請求の期限日本に住所がなくなった日から
特定技能で働いて帰国するとき、年金はどう扱うか
帰国する外国人社員には、脱退一時金を受け取る道と、日本の加入期間を残しておく道があります。どちらがよいかは、また日本で働く予定があるか、母国と日本の間に年金の協定があるかで変わります。選ぶのは本人で、会社は選択肢と期限を伝える役です。
図3帰国するときの3つの考え方
- 1脱退一時金を受け取る
日本で働く予定がもうない人の基本の道です。出国後2年以内に請求します。受け取ると、それまでの加入期間はなくなります。
- 2加入期間を残しておく
特定技能2号などで日本に戻る、または長く働く予定の人の道です。加入期間が合計10年以上になれば、老齢年金を受けられる場合があります。
- 3協定で通算する
日本と年金の通算を定めた社会保障協定がある国の人は、母国の年金の加入期間と合わせられる場合があります。
受け取ると、それまでの加入期間は消える
脱退一時金を受け取ると、請求より前の全期間は年金の加入期間ではなくなります。日本年金機構は、特定技能1号の後も日本に10年以上いると一定の条件で老齢年金を受けられる場合があるとして、将来の受給も考えて判断するよう案内しています。特定技能2号は在留期間の更新に上限がありません。2号を目指す人には「急いで受け取らない」選択肢もあると伝えます。
技能実習の後に特定技能で働いた人は2回に分ける
計算の上限は60か月です。技能実習3年と特定技能1号5年の計8年をまとめて請求すると、5年分しか計算されません。日本年金機構は、技能実習を終えて出国したときと、特定技能を終えて出国したときの2回に分けて請求すれば、合計8年分を受け取れると案内しています。国内で続けて特定技能に移った人は、途中で出国していないので、この分け方は使えません。
社会保障協定がある国の人
日本と社会保障協定が発効している国は24か国です(2025年10月27日更新)。特定技能の人が多い国ではフィリピンが入っており、ベトナム・インドネシア・ミャンマー・ネパールは一覧にありません。英国・韓国・中国・イタリアとの協定は保険料の二重負担の防止だけで、期間の通算はありません。通算できる国の人が脱退一時金を受け取ると、日本の加入期間がなくなるため、通算に使える期間も残りません。判断に迷うときは年金事務所に確かめるよう勧めます。
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脱退一時金はいくら?計算式と月給22万円の試算
厚生年金の脱退一時金は「平均標準報酬額×支給率」で決まります。支給率は加入した月数の区分ごとに決まり、60か月以上なら5.5です。標準報酬月額22万円で5年加入した人なら、支給額は約121万円で、ここから20.42%の税が差し引かれます。
図4厚生年金の脱退一時金の計算式
支給額=平均標準報酬額加入期間の標準報酬月額と標準賞与額の合計÷加入月数×支給率保険料率18.3%×1/2×加入月数の区分の数(6〜60)
| 加入した月数 | 支給率 | 支給額(試算) | 20.42%の源泉徴収後(試算) |
|---|---|---|---|
| 6〜11か月 | 0.5 | 110,000円 | 約8.8万円 |
| 12〜17か月 | 1.1 | 242,000円 | 約19.3万円 |
| 24〜29か月 | 2.2 | 484,000円 | 約38.5万円 |
| 36〜41か月 | 3.3 | 726,000円 | 約57.8万円 |
| 48〜53か月 | 4.4 | 968,000円 | 約77.0万円 |
| 60か月以上 | 5.5 | 1,210,000円 | 約96.3万円 |
支給率は最終月が2021年4月以降の場合の値です。区分の境目に注意します。59か月で帰国すると「54」の区分(支給率4.9)になり、60か月の人より約13万円少なくなります(試算)。
本人が払った保険料と比べると
支給率は「保険料率の半分×月数」なので、60か月までは、本人が負担した保険料とおおむね同じ額(税引き前)になる計算です。標準報酬月額22万円なら、5年間の本人負担は約121万円です。会社が負担した分は戻りません。60か月を超えた分も計算に入りません。
国民年金だけの人は定額
国民年金の脱退一時金は、最後に保険料を納めた年度の保険料額で決まる定額です。令和8年度に最後の納付がある場合、6か月以上12か月未満で53,760円、60か月以上で537,600円です。未納の月は数えません。
20.42%の税は、申告で精算できる
厚生年金の脱退一時金からは、所得税と復興特別所得税として20.42%が源泉徴収されます。国税庁の記載例では、支給額291,478円に対して59,519円です。日本に住所がない人は「退職所得の選択課税の申告書」を、翌年1月1日以後に税務署へ出せます。申告書には納税管理人の欄があるので、誰が手続きするかを出国前に決めておきます。住民税を含む税の流れは特定技能外国人の税金で扱っています。
外国人の年金:脱退一時金の請求の流れと必要書類
脱退一時金は、本人が出国して日本に住所がなくなってから請求します。請求先は日本年金機構で、郵送か電子申請(e-Gov)です。会社がするのは、退職時の資格喪失の手続きと、請求に必要な書類と期限を本人に渡しておくことです。
- 退職の1か月前:番号と口座を確かめる
基礎年金番号が分かる書類(基礎年金番号通知書など)と、受け取る口座を本人と確認します。ゆうちょ銀行と一部のネット専業銀行では受け取れません。日本の口座で受けるなら、名義がカタカナで登録されている必要があります。
- 退職日:会社が資格喪失の手続きをする
厚生年金・健康保険の資格喪失の手続きをします。外国人雇用管理指針は、離職時に資格確認書を回収するよう求めています。
- 出国前:市区町村に転出届を出す
転出届を出しておけば、日本に住所がないことを示す書類を別に用意しなくて済みます(住民票の消除を確認できない一部の例外を除く)。
- 出国後:請求書を書いて送る
日本語と外国語が並んだ請求書に記入し、パスポートの写し、口座の証明書類、基礎年金番号が分かる書類を添えて、日本年金機構に郵送するか電子申請します。
- 受け取った後:税の書類を保管する
支給額と源泉徴収された税額が分かる書類は、選択課税の申告に使うので捨てないよう伝えます。
期限は「住所がなくなった日から2年」
期限は退職日からではなく、日本に住所がなくなった日から2年以内です。退職後もしばらく日本に住み、次の仕事を探す人もいます。その場合は、その後に住所がなくなった日から数えます。
請求書は14言語、退職時に渡す
請求書は日本語と外国語の併記で、英語、中国語、インドネシア語、フィリピノ(タガログ)語、タイ語、ベトナム語、ミャンマー語、カンボジア語、ネパール語、モンゴル語など14言語あります。日本年金機構のサイトから印刷できるので、退職手続きのときに本人の言語の請求書を1部渡すと、帰国後に探す手間が省けます。帰国の旅費の負担ルールは特定技能の帰国費用は誰が負担する?で確認できます。
書類の原本は本人が持つ
請求書は本人のほか、委任状があれば代理人も出せます。ただし外国人雇用管理指針は、会社が旅券や在留カードを保管しないよう求めています。手伝うときも原本は本人が持ち、会社はコピーの取り方や送り先を教える役にとどめます。
本人への説明文の例:入社時と帰国前に話すこと
説明は、入社時と帰国が決まったときの2回に分けます。一度に全部を話すより、そのとき必要なことだけを短い文で伝えるほうが残ります。次の文例は、やさしい日本語で書いたものです。通訳や翻訳アプリに渡す元の文としても使えます。
図5外国人社員への年金の説明文の例(やさしい日本語)
入社のとき
- 「日本の会社で働く人は、みんな年金に入ります。」
- 「毎月の給料から、年金のお金を引きます。会社も同じ金額を払います。」
- 「病気やけがで体に障害が残ったとき、年金をもらえることがあります。」
- 「国に帰ったら、払ったお金の一部が戻る制度があります。」
給与明細の「厚生年金」の行を指で示しながら話します。
帰国が決まったとき
- 「国に帰ってから2年の間に、自分で請求します。」
- 「ゆうちょ銀行の口座では、受け取れません。」
- 「もらうと、日本で年金に入った期間はなくなります。」
- 「もらうお金から、20.42%の税金が引かれます。戻す手続きもあります。」
日本でまた働く予定の人には、急いで請求しない選択肢も伝えます。
数字は本人の給与明細で見せる
いくら引かれているかは、本人の明細で示すのがいちばん早く伝わります。標準報酬月額22万円なら本人の負担は月20,130円で、5年加入して帰国すると、脱退一時金の目安は税引き前で約121万円です(試算)。払った額と戻る額を並べると、「全部は戻らないが、なくなるわけでもない」ことが伝わります。明細の項目の説明の例は外国人社員の賃金の支払い方法で紹介しています。
説明の後に、本人の言葉で言ってもらう
年金は日本人でも分かりにくい話です。登録支援機関の通訳や母国語の担当者に同席してもらい、説明の後に「いつまでに請求しますか」「何%引かれますか」と聞いて、本人の言葉で答えてもらいます。言い換えのコツはやさしい日本語で伝えるにまとめています。
言わないほうがよいこと
「年金は掛け捨て」「帰国すれば全部戻る」は、どちらも正しくありません。前者は障害年金や脱退一時金を見落とし、後者は60か月の上限と税を見落としています。戻る額を会社が約束するのも避け、試算は必ず「目安」と添えて伝えます。
よくある誤解と、会社のチェックリスト
年金の行き違いは、入社時の誤解と、退職時の案内漏れの2か所で起きます。思い込みを先に正し、退職時にやることを一覧にしておくと、担当者が替わっても同じ説明ができます。
- 外国人は希望すれば年金に入らなくてよい法人の事業所で働く人は、国籍に関係なく厚生年金に入ります。会社は本人分も含めて納める義務があり、未加入は特定技能の受入れ基準にも反します。
- 帰国すれば払った保険料が全部戻る計算の上限は60か月で、20.42%が源泉徴収されます。会社が負担した分は戻りません。
- 出国の前に会社が請求を済ませておける日本に住所がないことが支給の要件です。出国して住所がなくなってから請求します。
- 何年たっても請求できる日本に住所がなくなった日から2年以内です。
退職が決まったら確かめること
- 入社時に、厚生年金に入る理由と、給与明細の保険料の行を説明したか
- 脱退一時金の仕組みと「受け取ると加入期間が消える」ことを、本人が理解できる言語で伝えたか
- 基礎年金番号と、受け取れる口座かを確かめたか
- 資格喪失の手続きをし、本人の言語の請求書と書類の一覧を渡したか
- 転出届の出し方と、税の手続きを誰がするかを確かめたか
- 日本でまた働く予定がある人に、受け取らない選択肢も伝えたか
母国語で説明できる支援先を選ぶ
年金や税の説明は、入社後の生活オリエンテーションや相談対応の場面でも出てきます。登録支援機関に支援を任せるなら、年金の説明を母国語でできるかを、委託の前に聞いておきます。特定技能のりあい窓口では、対応できる言語を条件に、合う会社を最大3社まで無料で紹介しています(掲載している会社から紹介手数料を受け取る場合がありますが、手数料の有無で提案の順番や内容は変えません)。会社が負担する保険料を含む費用の全体は特定技能外国人の人件費の総額で試算できます。
想定ケース:プラスチック成形工場(3拠点・従業員180人)の採用担当が、年金の説明を入社初日に移した理由
想定ケース(利用イメージ)について:この章は、特定技能の会社選びでよく寄せられる相談をもとに、編集部が場面を再構成した想定インタビューです。実在の企業・人物の発言ではありません。数値は公的資料にもとづく目安です。
プラスチック成形の3拠点で、特定技能の社員を受け入れている採用担当(40代男性)の想定インタビューです。年金への不満が、説明の順番を変えたことで減りました。
- 「年金を引かないでほしい」という相談が、見直し前の1年の7件から、見直し後の1年は1件に減った
- 3拠点とも、入社初日に同じ資料で20分の説明をする手順にそろえた
- 帰国した3人に母国語の請求書と書類の一覧を渡し、3人とも帰国後3か月以内に「請求した」と連絡をくれた
――説明を見直して、何が変わりましたか。
給料日のたびの苦情がなくなりました。以前は「年金を止めてほしい」という相談が1年で7件。いまは1件です。その1件も、明細を一緒に見て5分で納得してもらえました。
――見直すきっかけは何でしたか。
ある拠点の班長が、相談を受けて「外国人は払わなくていいはずだ」と答えてしまったんです。本人がそれを信じて総務に来て、大騒ぎになりました。調べると、拠点ごとに説明がばらばらで、そもそも誰も説明していない拠点もありました。
――本人たちは何に困っていたのでしょう。
手取りが減ることです。仕送りの額を先に決めている人が多いので、月2万円の差は大きい。「払っても自分には戻らない」と思い込んでいたので、不満が強くなっていました。
――説明の中身で、どこに迷いましたか。
戻る額を具体的に言ってよいかです。約束と受け取られるのが怖かった。結局、日本年金機構の支給率の表と、本人の明細で計算した目安だけを見せ、「実際の額は年金機構が決めます」と必ず添えることにしました。支援機関の通訳の方が、上限が5年分であることや税が引かれることを先に話してくれたのも助かりました。良いことだけを並べないほうが信用される、と感じました。
――つまずいたことと、その後の工夫は。
2号の試験を目指している社員に「早く請求したい」と言われたことです。受け取ると加入期間が消えると説明したら、しばらく考えて「試験の結果を見てから決める」と。会社が決めることではないので、選択肢と期限を書いた紙を渡しています。退職時の書類はチェックリストにして、3拠点の総務で同じものを使っています。
相談は無料です。条件に合う会社を最大3社までご紹介します。最終的に選ぶのは御社です。
よくある質問
外国人社員に年金を払いたくないと言われたら?
法律で加入が決まっていて、本人だけ外せないことを、落ち着いて説明します。法人の事業所で働く人は国籍に関係なく厚生年金に入り、会社には本人分も含めて納める義務があります。そのうえで、障害年金の保障があることと、帰国後に脱退一時金を請求できることを、給与明細と試算で示します。特定技能では、在留資格の申請のたびに社会保険料の納付状況が確かめられることも伝えます。
脱退一時金は、出国する前に請求できますか?
日本に住所がないことが支給の要件なので、出国して住所がなくなってから請求します。期限は、住所がなくなった日から2年以内です。出国前に転出届を出しておくと、住所がないことを示す書類を別に用意しなくて済みます。
賞与(ボーナス)も脱退一時金の計算に入りますか?
入ります。2003年4月以後の期間は、標準報酬月額と標準賞与額の合計を加入月数で割って平均標準報酬額を出します。賞与がある人は、その分だけ支給額が増えます。
技能実習の後に特定技能で働いた人は、何年分を受け取れますか?
1回の請求で計算されるのは最大60か月(5年)です。日本年金機構は、技能実習を終えて出国したときと、特定技能を終えて出国したときの2回に分けて請求すれば、技能実習3年と特定技能5年の合計8年分を受け取れると案内しています。
脱退一時金から引かれた税金は戻りますか?
厚生年金の脱退一時金からは20.42%が源泉徴収されます。日本に住所がない人は、翌年1月1日以後に「退職所得の選択課税の申告書」を税務署に出せます。申告書には納税管理人の欄があるので、出国前に手続きする人を決めておきます。戻る額は本人の状況で変わります。
国民年金に入っていた人も脱退一時金をもらえますか?
保険料を納めた期間などが6か月以上あれば請求できます。額は定額で、令和8年度に最後の納付がある場合、6か月以上12か月未満で53,760円、60か月以上で537,600円です。未納の月は数えません。
会社が本人の代わりに請求してもよいですか?
請求書は本人のほか、委任状があれば代理人も出せます。ただし、会社が本人の旅券や在留カードを預かることは、外国人雇用管理指針が求める扱いに反します。書類の原本は本人が持ち、会社は書き方や送り方を教える形が安全です。
特定技能2号に進む予定の人も、帰国のたびに請求したほうがよいですか?
本人が決めることですが、急いで受け取らない選択肢もあります。受け取るとそれまでの加入期間はなくなり、日本で長く働いて加入期間が10年以上になれば、老齢年金を受けられる場合があるためです。期限の2年の範囲で、将来の予定を考えてから決めるよう伝えます。
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この記事の編集方針と出典
- 制度・数値は、出入国在留管理庁・厚生労働省・所管省庁・自治体などの公表資料で確認し、時点を書いています(確認日:2026年10月14日)。
- 制度は改正されることがあります。申請の前に、必ず最新の公表資料で確認してください。
- 「想定ケース」は、よくある相談をもとに編集部が再構成したもので、実在の企業・人物の発言ではありません。
- 特定技能のりあい窓口は、掲載している人材紹介会社・登録支援機関から紹介手数料を受け取る場合があります。手数料の有無で、ご提案の順番や内容は変えません。
- 誤りにお気づきの場合は、下のフォームからお知らせください。確認のうえ修正します。
出典
- 日本年金機構「脱退一時金の制度」(2026年4月1日更新)
- 日本年金機構「脱退一時金の請求手続き」(2025年4月1日更新)
- 日本年金機構 よくある質問「技能実習の後に特定技能1号で働いた場合の脱退一時金」(2021年4月1日更新)
- 日本年金機構「社会保障協定」(2025年10月27日更新)
- 日本年金機構「障害年金(受給要件・請求時期・年金額)」(2025年6月30日更新)
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」(2026年10月確認)
- 日本年金機構「特定技能(本人用)の書類が必要な場合の申請方法」(2026年4月16日更新)
- 日本年金機構「特定技能所属機関(社会保険適用事業所)の書類が必要な場合の申請方法」(2026年5月18日更新)
- 国税庁「退職所得の選択課税の記載例(②厚生年金の脱退一時金)」(令和7年分)
- e-Gov法令検索「厚生年金保険法」(第6条・第82条)(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「国民年金法」(第7条)(2026年10月確認)
- 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(令和8年5月29日改正を反映)(2026年10月確認)
- 出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」(Q43・Q44)(2026年10月確認)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(在留資格区分別)」(令和7年調査)
最終更新:(2026年10月版)
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